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「メキシコ五輪得点王」の釜本邦茂を知らずに来日したセルジオ越後は「実際に対戦して、すぐに納得したよ」「ペレも認めていた」

  • 渡辺達也●構成 text by Watanabe Tatsuya

セルジオ越後の「新・サッカー一蹴両断」(15)

1977年の「ペレ・サヨナラ・ゲーム・イン・ジャパン」にて。ペレ(左)、釜本氏(中央)、セルジオ氏(右)の貴重なスリーショット photo by Okazawa Katsuro/AFLO1977年の「ペレ・サヨナラ・ゲーム・イン・ジャパン」にて。ペレ(左)、釜本氏(中央)、セルジオ氏(右)の貴重なスリーショット photo by Okazawa Katsuro/AFLO

 日本サッカー史上最高のストライカー、釜本邦茂氏が逝去した。享年81。現役時代に何度も対戦経験があり、1984年に行なわれた釜本氏の引退試合では、来日したペレの通訳を担当。1歳違いで、お互いの引退後も親交のあったセルジオ越後氏がその死を悼む。

【一緒のチームでプレーしたかった】

 釜本さんは、日本のペレ。日本サッカーの神様みたいな人だ。

 僕が日本に来たのは1972年で、釜本さんは1968年メキシコ五輪で銅メダルを獲得し、自らも得点王を獲得するなど、すでに競技の枠を超えたスーパースターだった。でも、当時の僕はひとつ年上の彼のことを全然知らなかったんだ。何しろ昔のブラジルはワールドカップにしか興味がない国だったからね。

 でも、実際に日本リーグの試合で対戦して驚いた。テクニックはもちろんだけど、とにかくパワフル。当時の日本人選手にしては背が高くて(公称179㎝)、ゴツゴツと体に厚みがあって、太ももも本当に太かった。

 ペナルティエリア内に入ると、相手をガチっとブロックしてシュートまでもっていく。キック力もある。ジャンプ力もあってヘディングも強い。そうやってボコボコと点を取るんだから。日本で一番の選手と聞いていたけど、実際に対戦して、すぐに納得したよ。本当にバケモノだった。僕のいたチームで釜本さんをマークする役割の選手が、「どうやって止めるんだ? 絶対に決められるよ」と試合前に怖がっていたくらいだ。

 昔のプロ野球で、若いピッチャーが長嶋茂雄さんと対戦する際、「何を投げても打たれるよ」と縮こまっていたと聞くけど、同じような感じじゃないかな。

 釜本さんが所属していたヤンマーには僕と同じ日系ブラジル人のネルソン吉村がいて(※のちに日本国籍を取得した吉村大志郎)、彼は釜本さんへのアシスト役として知られ、日本リーグのアシスト王に輝いたこともある。でも、僕に言わせれば、同じチームに釜本さんがいるなんてずるい(笑)。いいクロスを上げれば、ほとんど全部決めてくれるんだから。

 実際、僕は吉村に冗談でこう言ったんだよ。「君は釜本さんにパスを出しているからアシスト王になれた。僕は釜本さんじゃないFWにパスを出しているからアシスト王になれない。僕も釜本さんにパスを出せればアシスト王になれた」って。吉村は笑っていたけど、そのくらい釜本さんはシュートがうまかった。同じチームでプレーしていたらどうなっていたのかなと、いまでも思うよ。

 実は一度だけ、国立競技場で行なわれたエキシビジョンマッチで一緒にプレーしたことがあって、公式戦じゃないのに「俺に上げろ」「俺に出せ」と要求していて、ゴールへの執着心を感じたね。根っからのストライカーだ。あと、釜本さんがやっていたサッカー教室を観に行ったこともあるんだけど、そのほとんどがシュート練習だったことも覚えている。

 釜本さんとは現役時代にはほとんど話をしたことがなく、引退後には一緒に仕事をさせてもらう機会があって、以前にこの連載を掲載していた『週刊プレイボーイ』でも対談をやったりしたけど、特別に親しい関係というわけではなかった。それでも、たまに会うと、日本サッカーの問題について建前ではなく本音で語り合えたし、尊敬できる先輩だった。

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著者プロフィール

  • セルジオ越後

    セルジオ越後 (せるじお・えちご)

    サッカー評論家。1945年生まれ、ブラジル・サンパウロ出身。17歳の時に名門コリンチャンスのテストに合格し、18歳の時にプロ契約を結び、MF、FWとして活躍した。「エラシコ」と呼ばれるフェイントを発案し、ブラジル代表の背番号10を背負った同僚のリベリーノに教えたことでも有名。1972年に日本リーグの藤和不動産(湘南ベルマーレの前身)から誘いを受け、27歳で来日。1978年から日本サッカー協会公認の「さわやかサッカー教室」で全国を回り、開催1000回以上、のべ60万人以上を指導した。H.C.日光アイスバックスのシニアディレクター。日本アンプティサッカー協会最高顧問。公式ホームページ【http://www.sergio-echigo.com】

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