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サッカー日本代表の未来は安泰か 2030年ワールドカップのメンバーを考えてみた (3ページ目)

【左利きの守備選手の台頭が望まれる】

小宮良之(スポーツライター)

この記事に関連する写真を見るFW/中村敬斗(三笘薫)、上田綺世(塩貝健人)、久保建英 
MF/中島洋太朗(鎌田大地)、田中碧、佐野海舟(田中聡) 
DF/新保海鈴、板倉滉、高井幸大、関根大輝 
GK/小久保玲央ブライアン(鈴木彩艶)

 率直に言って、5年後の代表は想像がつかない。もし想像がつくような代表なら、それは停滞を意味する。アップデートのない集団は衰退の一途をたどる。5年後には"この選手がまさか"という選手も台頭してこないと厳しい時代を迎えるはずで......。

 ただ、主軸は残るべきだし、残るはずだ。

 上田綺世(フェイエノールト)、久保建英、板倉滉(ボルシアMG)の3人は、30歳前後で大会を迎えることができる。現時点でも、各ポジションで個性を発揮。プレースタイルはやや変化しても、欠かせない存在だろう。

 上田は31歳になっているが、日本人FWが一番熟成する年齢で(Jリーグで日本人FWはほとんどが30代に入って初の得点王。中山雅史、佐藤寿人、大久保嘉人、小林悠、大迫勇也など)、円熟の域か。オランダ挑戦の塩貝健人の猛追も期待したい。久保はややスプリントが落ちても、トップ下でプレーメイクにもかかわる役割も期待できるし、絶対的なエースか。板倉はディフェンスリーダーになることが望まれる。バーレーン戦はやや低調だったが......。

 三笘薫は33歳で機動力を考えると厳しい。ただ、極限まで自分と向き合う選手だけに、5年後も自らの生かし方を探し当てている可能性もある。最近はゴールゲッターとして開花しているだけに......。

 ただ、中村敬斗が定位置を奪う成長こそ、代表を強力にする。彼の得点力の高さは本物。欧州挑戦でもうひとつレベルアップできたら......。

 遠藤航、守田英正(スポルティング)は現時点で絶対的存在だが、ふたりとも35歳以上で、彼らを凌駕する選手が出てこないことは弱体化を意味する。その点、田中碧はバックアッパー的存在から殻を破ってほしいし、佐野は欧米の選手と真っ向から戦える力量を持つ。田中聡はJリーグのMFでは比類なきクレバーさで、ポテンシャルは高い。

 そして最大の注目は中島洋太朗で、破格のビジョンやスキルを持つ。現時点で、底が見えない。「時間を操る」という域の選手で、鎌田大地(クリスタル・パレス)のエレガントな才能とも通じ、彼だけの間合いがある。攻守両面で中心になっていてもおかしくはない。

 パリ五輪のメンバーでは、関根大輝、高井幸大、小久保玲央ブライアン(シント=トロイデン)の3人に底上げが求められる。関根のスケール感は、フランス挑戦で触発されるだろう。高井のセンスは歴代センターバックでもトップで、これから大化けできるか。小久保はパリ五輪出場の殊勲者で、海外で積み上げてきた感覚はアドバンテージ。鈴木彩艶への期待の声は内外で大きいが、ワールドクラスのプレーを見せる一方、ユースレベルのポカが今も消えず......。

 最後に本命不在が左サイドバックだろう。現時点でボールプレーを重んじた場合、左足のキックで起点になれそうなのは新保海鈴(横浜FC)か。昨シーズンはJ2のベストサイドバックで、J1で揉まれたら面白い。日本は左利きの守備のポジションの選手が圧倒的に足りず、台頭が望まれる。

 いずれにせよ、無名に近い選手の台頭こそ、日本サッカーが強くなるために必要条件だ。

著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

  • 西部謙司

    西部謙司 (にしべ・けんじ)

    1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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