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サッカー日本代表の3バックは行き詰まり サウジアラビア戦では本番を見据えた4バックを採用すべし

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

 2026年W杯アジア最終予選のバーレーン戦は、控え目に言っても凡戦だった。前へボールを運べず、攻守にノッキングを起こしていた。勝利を収めたことで帳尻を合わせたが、危機的な内容だった。

 最終予選を通じてこだわってきた3バックは、すでに行き詰まっていた。

 真ん中に板倉滉、右に瀬古歩夢、左に伊藤洋輝で組んだ3バックは、無駄なパスを繰り返した。お互いの距離が近すぎたからで、ビルドアップに難を抱えていた。相手が強豪だったら、プレスをはめ込まれていただろう。90分を通じ、両サイドが大きく開くなど、改善のアクションもなかった。

 3月25日のサウジアラビア戦は、世界との対峙を想定し、4バックに戻すべきではないか?

バーレーン戦で3バックの中心を務めた板倉滉 photo by Yamazoe Toshioバーレーン戦で3バックの中心を務めた板倉滉 photo by Yamazoe Toshioこの記事に関連する写真を見る 森保ジャパンの3バックは、「攻撃の手数を増やし、得点を増やす」ことを主眼にスタートを切った、攻撃的なシフトと言える。たとえばドイツ王者のレバークーゼンは、この前輪駆動のシステムを成立させている。ウイングバックのふたりがウイングのような高い位置を取り、ボランチのいずれか、ふたりのシャドー、トップと、5~6人が常時、攻撃に関わって相手を押し込むのだ。

 日本は最終予選で、相手がかなり下のレベルの場合、攻撃をし続け、システムの特性を生かすことができた。中国、(アウェーの)バーレーン、インドネシアとの試合では、大量得点に成功。ひとつのバリエーションとしては悪くはない......。

 だが今回、チームプレーを仕上げてきたバーレーンに苦戦したように、3バックは諸刃の剣である。

 3バックは、左右ウイングバックとのセットである。しかし、三笘薫も、堂安律もバックラインまで下がってしまい、結局は5バックになっていた。これでは攻撃的なサッカーなどできるはずがない。むしろ守備の脆さをさらけ出すだけだった。

 森保一監督はその事態に、ほとんど90分、何の手もつけられていない。

 3バックの中心になるべきだった板倉も、自らが戦い方を改善させるようなリーダーシップを示すことができなかった。左右のセンターバックが大きくサイドまで開いて、ウイングバックを前へ押し出すようにすることで攻撃姿勢を取れたはずだが、機能不全のなかで90分を過ごした。そこで創意工夫がなかったのは残念だ。

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著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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