サッカー日本代表・森保監督の欧州在住計画に賛成 だがそこで浮かんでくる疑問がある (2ページ目)
【外国人監督のハードルが下がる】
欧州に住む計画があることを明かした森保一日本代表監督 photo by Fujita Masato Jリーグ軽視との指摘も受けるだろうが、選考に漏れがあるとすれば国内組か、欧州組か。可能性を秘めた選手は欧州組が絶対数で国内組に勝るだろう。だからJリーグ軽視の批判は当たらない。W杯アジア3次予選が終了したら、代表の活動そのものも欧州で行なってほしい。親善マッチはそのほうが組みやすくなる。目指すべき理想はヒディンクが率いたかつてのオーストラリア代表だ。
欧州にじっくり腰を据えて滞在すれば、受ける刺激が違う。知らぬ間に指導者として知見や感覚が養われる。森保監督にとっても"監督力"を上げる絶好の機会になる。欧州の常識や感覚を備えた、従来の日本人監督像を超えた指導者になれるかもしれないのだ。
もっとも、森保監督が欧州に常駐することになれば、そもそもの疑問が生じる。日本代表監督が日本人監督である必然性だ。欧州在住者が日本の監督になるなら、ヒディンクのような欧州人のほうがはるかに適任ではないか。
なでしこジャパンの新監督、ニルス・ニールセンが、どれほどの年俸で引き受けたのか定かではないが、外国人監督を日本に招こうとした際にネックとなるのは年俸だ。最近の欧州の物価高、円安で推移する為替レートも輪をかける。それなりの人物を欧州から招こうとすれば、日本人監督より数段、高額な年俸を用意しなければならない。だが、欧州在住のままでいいなら話は変わる。
年の3分の2を欧州で過ごしていいなら、家族と別れて暮らす必要もない。大仰な話ではなくなるのだ。希望者は増える。年俸に加えて経費も抑えられる。契約の選択肢そのものが増える。ヒディンクではないが、クラブ監督との掛け持ちが許されるなら、ますますハードルは下がる。
協会は現在、欧州組の情報を日本に伝える現地スタッフを抱えているが、欧州在住者が日本代表監督に就けば、逆に日本の状況を欧州に伝えるスタッフが必要になるだろう。
欧州組はまだまだ増える。代表監督が欧州に常駐する必然性は増すばかりだ。森保監督がその口火を切れば、それが前例になる。日本人の代表監督は欧州に移住することが普通となれば、逆に代表監督は日本人でなくても構わないという話になる。むしろそのほうが事は円滑に進むかもしれない。
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