サッカー日本代表・森保監督の欧州在住計画に賛成 だがそこで浮かんでくる疑問がある
連載第29回
杉山茂樹の「看過できない」
100人にのぼるとされる欧州組。日本代表選手も、27人中、国内組はいつも3~4人程度で、欧州組が9割近くを占める。もう何試合も国内組はスタメンを飾っていない。
日本は、欧州から見れば韓国よりさらに先に位置する極東の国。サッカーのメジャー国のなかで欧州から最も離れている国をオーストラリアだとすれば、日本は2番手に位置する国となる。
オーストラリアはW杯で2006年ドイツ大会と2022年カタール大会で2度、ベスト16に進んだ実績がある。印象深いのはグループリーグ初戦で日本と直接対決した2006年だ。結果は1-3。ジーコ率いる日本代表は先制点を奪ったものの、そこから3点を連取され逆転負け。最後はズタズタに引き裂かれた完敗劇である。
当時、オーストラリアの監督はフース・ヒディンクだった。1998年フランスW杯ではオランダを、2002年日韓共催W杯で韓国をそれぞれベスト4に導き、2004-05シーズンはPSVをチャンピオンズリーグでベスト4に押し上げた名将だ。ミランとの準決勝で演じた激闘は、名勝負としていまなお脳裏に鮮明である。オーストラリア代表監督に就任したのはその直後。PSVの監督との兼任だった。
当時のオーストラリアはハリー・キューウェル、マーク・ヴィドゥカ、ブレット・エマートン、ティム・ケーヒルら優秀な選手揃いで、メンバーの大半が欧州組だった。現在の日本と酷似する。
活動の場は主に欧州だった。監督、選手の大半が欧州にいるので、当然といえば当然だが、その姿を、一介の日本人ライターは羨望の眼差しで見つめたものだ。
先日、欧州で視察を終えて帰国した森保監督は、記者団を前に、欧州に常駐する計画があることを明かしたという。選手の状態を直接確かめようとすれば、視察という形では限界がある、と。
発案者は森保監督なのか、協会側なのか。その滞在経費を誰が出すのかなども知りたくなる点だが、筆者が日本代表監督なら、現地で欧州組の試合を見れば見るほど、日本に在住していた自分が恥ずかしくなるだろう。協会ともども気がつくのが遅いと言いたくなるが、欧州行きそのものは妥当な選択だと考える。文句なく賛同する。
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著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。