イングランドで成長を実感する長谷川唯「マンチェスター・シティではサッカーをやっていて楽しい!」 (3ページ目)
【なでしこジャパンに足りないと感じていたところ】
なでしこジャパンでは攻撃においての期待も高い長谷川だが、パリオリンピックでは守備を大前提とした戦い方で、2023年の女子ワールドカップ同様に準々決勝敗退。ベスト8の壁を越えることはできなかったが、彼女は力の限りは尽くした結果だと前を向く。
「自分たちがボールを持って主導権を握ってサッカーをするというのは、パリオリンピックの段階で自分たちにはできなかったと思います。本当にそれをやるんだったらゴールキックのつなぎから、ポジショニング、サポートの角度、出した後のスピード......。基本的なことですけど、そこが本当に大事になってくる。みんながそれをできるチームしか主導権は握れないんです。自分は代表にはそこが足りないと感じていました」(長谷川)
なでしこジャパンの新指揮官ニルス・ニールセン監督は、直前までマンチェスター・シティ女子チームのテクニカルダイレクターを務めていた縁がある。就任会見時には「彼女(長谷川)は、言葉は少ないがピッチで存在感を示す。ハードなタックルはしませんが、今季のイングランド女子スーパーリーグでのボール奪取率が1位だった」と語り、長谷川への評価は高く、信頼は厚い。
2021年東京オリンピックからの3年間の戦いで、なでしこジャパンは外国チームの強度がどういうものかを叩き込まれた。そして今は海外クラブに所属する選手が多く、そのほとんどがここからフィジカル、経験値ともに成熟期に差し掛かっていく。この先4年間での個々のレベルアップは過去最大幅になることが予想される。
そして、なでしこジャパンのスタイルに影響を受け、2018年から4年間でスイス女子代表を簡単に負けないチームに押し上げたニールセン監督は、なでしこジャパンの戦い方、日本人のサッカー観に理解が深い。
新チーム始動を前に、今、長谷川が思い描く次なる"なでしこジャパン"の姿とは?
「自分としては、つなぐサッカーは目指したいです。どうボールを動かすか、そのためのポジショニングをチームに落とし込んでいくのが一番いいのかなと思います。やっぱり日本人って頑張れるし、みんなでやるべきことを成し遂げようとする力がある。チームとしてちゃんと共有できれば、結果もついてくると思うんです。
個人的にはシティみたいな形のサッカーができるのが理想ですけど、そこは新監督の考えもあるので、自分がフィットしていかないといけないところ。そもそもまずは、代表メンバーに選ばれないといけないので、個人のプレーも大事にしながらここでプレーを磨いていきたいです」(長谷川)
ニールセン監督のイメージと大きな乖離はなさそうだ。長谷川が新生なでしこジャパンにおいてどのような役割を担うのか、本格始動となる2月のSheBelieves Cupが楽しみだ。
著者プロフィール
早草紀子 (はやくさ・のりこ)
兵庫・神戸市生まれ。東京工芸短大写真技術科卒業。在学中のJリーグ元年からサッカーを撮りはじめ、1994年からフリーランスとしてサッカー専門誌などに寄稿。1996年からは日本女子サッカーリーグのオフィシャルカメラマンも担当。女子サッカー報道の先駆者として、黎明期のシーンを手弁当で支えた。2005年より大宮アルディージャのオフィシャルカメラマン。2021年から、WEリーグのオフィシャルサイトで選手インタビューの連載も担当。
【写真】長谷川唯フォトギャラリー マンチェスター・シティで奮闘!
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