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森保ジャパン「ベストメンバー主義」の代償 南野拓実、冨安健洋のケガの責任は誰がとるのか (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【インドネシア戦、中国戦に"連投"する必要はあったか】

 いただけないのは、インドネシア戦、中国戦を戦った先のW杯アジア3次予選の最中だったというケガをしたタイミングだ。南野はそれまでの4戦同様、この2試合にいずれも先発出場。合わせて109分間プレーしている。日本代表の拘束期間に負ったケガで、CLの重要な一戦を棒に振ったわけである。

日本代表のなかで最も稼働率の高い選手のひとり、南野拓実 photo by Fujita Masato日本代表のなかで最も稼働率の高い選手のひとり、南野拓実 photo by Fujita Masato 南野のケガを発表したのはモナコと南野本人だった。拘束していた日本サッカー協会から言及はなかった。代表チームにとって選手は所属クラブからの借り物だ。それをキズ物にして返したとなれば責任は重い。だが、協会はそのケガを把握さえしていなかった。サッカー選手にケガはつきもの、仕方ない問題、で済ますことはできない。

 防げるケガはある。対戦した相手はインドネシアと中国だ。2試合ともアウェー戦とはいえバリバリのチャンピオンズリーガーである南野に"連投"を強いる必要性のある試合だろうか。日本人選手が所属する欧州のクラブ関係者は、いかに相手が弱くとも、毎度ベストメンバーで臨もうとする森保一監督及びサッカー協会を、さぞや訝しげに眺めているに違いない。

 インドネシア戦、中国戦とCL。南野にとって重要な試合はどちらか。日本代表の強化という視点に立ってもCLに軍配は挙がるだろう。W杯アジア3次予選で日本と2位オーストラリアとの差は9ポイント。得失点差も20(得点22、失点2)ある。オーストラリアの得失差(+1)と比較すると、差はいっそう鮮明になる。

 ホーム戦3試合を含む4試合を残して、1勝すれば、世界に先駆けて日本のW杯本大会出場が決まる。相手がいくら弱いとはいえ、勝ちすぎである。オーバーペース。飛ばしすぎ。強者の振る舞いができていないのだ。

 その昔、アルベルト・ザッケローニがW杯予選の最初の段から、ベストメンバーで臨み続けたことがあった。「そこまでしなくても大丈夫」と進言したくなったほどだが、実際には急に日本を訪れた欧州の監督が、アジアの特殊な事情を理解することは簡単ではない。日本人監督を起用するメリットが浮上する理由でもある。

 しかし、森保監督を見ているとその意見を撤回したくなる。日本人監督でもダメな人はダメ。監督の国籍の問題ではないことに気づかされる。弱者相手にベストメンバーで臨み続け、残り4戦を残して王手をかける姿は、欧州人の目には異様に映っているに間違いない。

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