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バルサ、インテルに「緩み」をつかれて失点も追いつく 「圧倒的な技術」は裏切らない

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

 チャンピオンズリーグ(CL)準決勝、モンジュイックで行なわれたバルセロナ対インテルの第1戦。バルサを攻撃的サッカーとすれば、5バックで守りを固めるインテルは守備的だ。最近のイタリアサッカーはだいぶ変わったが、かつては守備的と相場が決まっていた。言うならば、インテルは国の伝統を受け継ぐイタリアらしいクラブだ。一方、バルサはヨハン・クライフが監督を務めていたことから、攻撃的サッカー界をリードするカリスマ的な存在として知られている。

 下馬評で上回ったのはバルサ。大手ブックメーカーのひとつ、ウィリアムヒル社の優勝予想オッズはバルサが3倍でインテルが5倍。1番人気対4番人気の対戦だった。

 ところが、開始わずか30秒、右ウイングバック、デンゼル・ダンフリース(オランダ代表)の折り返しをFWマルクス・テュラム(フランス代表)が右足かかとで流し込み、インテルが先制する。

 さらにインテルは前半21分、フェデリコ・ディマルコ(イタリア代表)が蹴った左CKをCBフランチェスコ・アチェルビ(イタリア代表)が落とす。それに反応したダンフリースがオーバーヘッド気味のボレーで豪快にバルサゴールに突き刺した。

インテル戦で反撃の狼煙となるスーパーゴールを決めたラミン・ヤマル(バルセロナ) photo by Nakashima Daisukeインテル戦で反撃の狼煙となるスーパーゴールを決めたラミン・ヤマル(バルセロナ) photo by Nakashima Daisukeこの記事に関連する写真を見る 2-0となって想起したのは、1993-94シーズンの決勝。アテネで行なわれたミラン対バルセロナ戦だ。試合前に配られた、識者100人に聞いたアンケートによれば、90人近くがバルサを勝者に挙げた。今回と同様のパターンである。

 ミランと対戦した31年前のバルサはそのまま崩れていった。ロマーリオ、フリスト・ストイチコフ、ロナルド・クーマンという豪華な助っ人に加え、ジョゼップ・グアルディオラまで擁しながら、バルサは0-4で敗れた。CL決勝史上、最も点差がついた一戦、最大の番狂わせとしてサッカー史に刻まれる。

 バルサはクラブの体質として、立ち上がりに弱点を抱えている。格下に先制弾を許しやすい傾向がある。実際、そこから追い上げていき逆転するという試合を幾度となく目にしてきた。もちろん、追って届かず、という試合も少なくない。こうした展開の緩いサッカーをする頻度の多さが、ライバルチームであるレアル・マドリードに、CLの優勝回数(15対5)で大きく劣る理由だと言える。

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著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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