サッカー日本代表の中国戦で思い出す20年前のアジアカップ「反日ブーイング」には別の意味も? (4ページ目)

  • 後藤健生●文 text by Goto Takeo

【FIFA会長にブーイング!?】

 開会式ではこんな事件も起きた。

 来賓のゼップ・ブラッターFIFA会長(当時)が挨拶に立つと同時に、スタンドからブーイングが起こったのだ。

 だが、これはブラッター会長に対するものではなく、その直前に挨拶に立っていた協会幹部に対するブーイングだったのだ。

 中国のような権威主義国家ではテレビの生中継は1~2分ほど遅れて放送されている。"不祥事"が起こった時に即座に中継を中止できるようにするためだ(不祥事とは反政府運動のことだ)。

 そして、開会式の時には場内の映像装置にもテレビ中継の映像がそのまま映し出されていた。だから、ブラッターが喋りだした時には、さっきまで演説していた中国の幹部の姿が映っていたのだ。

 また、決勝戦の時には実際に反政府的なチャントが聞こえてきた瞬間もあった。だが、場内にはすぐに「ワーッ」という歓声のような音声が大音量で流されてチャントが聞こえないようにされた。政府側も、「反日ブーイング」に反政府的な意味合いがあることは重々承知しており、準備万端だったのだ。

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