サッカー日本代表の悪い流れを変えていった久保建英 中国に「カオス」を与え攻撃の起点に
2026年W杯アジア3次予選、日本は中国を敵地で3-1と下している。これで5勝1分けとなり、本大会出場も見えてきた。アジアでは圧倒的な強さを見せつけている。だが......レアル・ソシエダ(以下ラ・レアル)の久保建英がいなかったら、緊急事態になっていたかもしれない。
中国戦で、森保ジャパンは苦戦を余儀なくされている。
守田英正、鎌田大地、三笘薫らをターンオーバーで休ませたことも影響したか、攻撃が単発になっていた。中盤で流動性を生み出せず、ボールを前に運べない。3バックが前に運んだり、両端の選手がサイドバックのようにフォローアップしたり、ダイナミズムを生み出そうとはしていたが、一進一退で、シュートにたどり着くのもひと苦労だった。
その流れを徐々に変えていったのが、3-4-2-1のシャドーで先発した久保だ。
中国戦に先発、攻撃の起点となり勝利に貢献した久保建英 photo by Getty imagesこの記事に関連する写真を見る 12分、右サイドで伊東純也が奪われたボールを、久保は力強く奪い返し、ゴールに迫っている。うまくコンビネーションが生み出せない状況で、攻撃を仕掛ける逞しさがあった。伊東とのパス交換は必ずしも成功しなかったが、それを繰り返すことで、ジャブのように効いていった。20分には久保は味方を囮にしてドリブルで入り、ラストパスを受けた伊東がエリア内で倒されている。
久保は相手を恐れさせていた。焦ったディフェンダーから後ろから削られて、イエローカードを誘発。中国の選手をさらに警戒させ、楔を打つ格好になった。24分には、遠藤航からのパスをダイレクトで田中碧に通し、そのまま走り出してラインの間でリターンを受けると、中村敬斗のシュートを演出した。
この日、先発した選手のなかでは、遠藤と並び、久保はモノが違った。最大の持ち味は連係力だが、対人も並はずれて強い。独力でも、チームにアドバンテージを与えられるしたたかなアタッカーだ。
「端的な表現を使うなら、『Completo(完璧)』な選手だよ。誇張しているわけではない。タケ(久保)はなんでもできてしまうんだ」
昨年10月のインタビュー取材で、ミケル・アランブルが久保を絶賛していた言葉を思い出した。
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著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。