検索

サッカー日本代表の「無失点」はそれほど重要か 一観戦者にとって魅力的な試合とは? (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【美しかった3-2の試合の数々】

 観戦者がそれを望んできた。ファンが望む理想的スコアは3-2だと言われている。どちらかが無得点で終わる試合ではない。初めて出かけたW杯で、筆者は早速それを実感することになる。

 1982年スペインW杯2次リーグ。いまはなきバルセロナのデ・サリアスタジアムで行なわれたブラジル対イタリアだ。この試合を見てしまったばっかりに、ライターの道に進むことになった、自分史に大きな影響を与えた一戦だ。試合は3-2でイタリアが勝利した。

 スペインW杯では、セビリアのラモン・サンチェス・ピスフアンで行なわれた準決勝、フランス対ドイツも忘れることはできない。3-2を通り越して3-3になり、PK戦にまで及んだ一戦である。

 3-2にこだわれば、1994年アメリカW杯準々決勝。ダラスのコットン・ボウルで行なわれたオランダ対ブラジル戦も美しい試合として印象に残る。ブランコ(ブラジル)の鬼のようなFK弾で決着がついた試合だが、攻撃的サッカー同士の撃ち合いに酔いしれることになった。

 オランダ絡みではもう1試合、挙げずにはいられない3-2の一戦がある。ユーロ2004のグループリーグ、アヴェイロで行なわれたオランダ対チェコだ。火花が散るようなハイレベルの好勝負。アリエン・ロッベンのドリブルと、勝利を収めたチェコの監督、カレル・ブリュックナーの采配が光った一戦に、筆者は陶酔することになった。

 日本が世界の舞台に立ったのはW杯で言えば1998年フランスW杯以降だ。それ以前のW杯やユーロは、出場国の当事者の立場では取材していない。観戦取材は試合鑑賞とほぼ同義語だった。歓迎すべきは当然、完封ではなく撃ち合いだった。

 世界のファンも日本に対してそれを望んでいるはずだ。世の中には日本の完封勝利を喜ぶファンばかりではない。テレビ解説者の「ゼロで抑えたいですね」は誰に向け、どの視点に立って喋っているのか。

 サッカーの面白さは、外国チーム同士の試合でも楽しめることだ。日本人がピッチにひとりもいなくても、多くの人が関心を寄せることができる。それは世界共通だ。サッカーが世界で断トツの人気競技である理由である。ゲームそのものにエンタメ性が内包されている。

3 / 4

キーワード

このページのトップに戻る