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田嶋幸三「サッカーの火を消してはならない」100年に一度の危機にどう立ち向かったか (2ページ目)

  • 戸塚 啓●取材・文 text by Totsuka Kei

【代表チームの強化活動を止めてはならない】

 コロナ禍では日本代表の国際Aマッチなどが開催されていない。収入は大幅に減っている。それでも、47都道府県のサッカー協会、全国9地域の協会への補助金は、例年どおりに交付した。

 サッカーの火を消してはならない。

 47都道府県協会、町クラブやスクールを潰してはならない。

 各種リーグ、連盟を支えなければならない。

 子どもたちの笑顔を、絶やしてはならない──。

 そうした思いが、田嶋とJFAの職員たちを衝き動かした。

田嶋幸三JFA前会長が激動のコロナ禍を振り返る photo by Sano Miki田嶋幸三JFA前会長が激動のコロナ禍を振り返る photo by Sano Mikiこの記事に関連する写真を見る「新型コロナウイルスは100年に一度の危機、と言われました。我々には諸先輩方が積み立ててくれたものがありましたので、これは今こそ使うべきだろうと。そこに迷いはありませんでした」

 田嶋が自らに課した使命が、もうひとつある。

 代表チームの強化活動を止めてはならない、というものだ。

 海外との往来が自粛されていた2020年10月と11月に、日本代表はヨーロッパで強化試合を行なっている。「ヨーロッパでプレーしている選手を集めて、ヨーロッパで試合をしよう」と声を挙げたのは、ほかでもない田嶋である。

「ヨーロッパは9月から、無観客でネーションズリーグをスタートさせていました。各国のリーグ戦も始まっているので、コロナ禍での試合運営を積んできている。ヨーロッパでプレーしている選手でチームを編成して、森保監督以下スタッフに渡欧してもらえば、試合ができるのではないかと考えました」

 日本代表と対戦相手、さらには運営に関わるJFAや現地スタッフから感染者が出たり、クラスターが発生したりしたら、「時期尚早」や「準備不足」といったそしりを免れない。実際に、10月に対戦したカメルーン代表の選手が、試合が行なわれるオランダ入り後にPCR検査で陽性判定を受けた。しかし、迅速な対応で感染拡大には至らず、試合は無事に開催された。

「全員が同じ方向を向いての黙食などを、対戦相手にも求めました。『なんでそんなことをしなきゃいけないんだ』と言われましたが、10月、11月と無事に試合を終えることができました。10月の2試合を終えた段階で韓国協会の関係者から、『どんな対策をしたのか?』と聞かれました。彼らは11月に、オーストリアで2試合やりましたね」

 日本のスポーツ界のモデルケースとなった2度の欧州遠征は、翌2021年から再開が見込まれるカタールワールドカップ2次予選、さらには2021年夏開催の東京五輪へ向けたテストマッチへの助走となった。

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