【谷口彰悟・新連載】憲剛さんに言われた「そろそろキャプテンをやったほうがいい」ですべてが変わり、日本代表へとつながった (3ページ目)

  • text by Harada Daisuke
  • photo by ©KAWASAKI FRONTALE

 そして同時に「みんな疲れているからこれくらいでもいいか」と思っていたところが、「いや、それではダメでしょ。もっと、やろうよ」という自分自身への言葉にも変わった。

 自分なりのキャプテン論があるとすれば、キャプテンはチームのリーダーであり、大袈裟な言い方をすれば、チームの方向性を決めていかなければいけない立場だと思っている。

 それは試合でうまくいかなかった時、チームとしてどう対処していくのかというピッチ内でのこともひとつだし、練習のテンションをどのくらい高く設定するのかということもひとつ。キャプテンである自分自身が、チームのみんなに、どのくらいの強度で練習をしたいのか、どのくらいの質で練習をしたいのかを伝え、導くことができるし、導かなければならないと思っていた。

 そして周りに要求するからには、キャプテンである自分は「さらに」「もっと」と、やらなければいけなくなる。それは、自分の甘さを払拭する契機になった。

 また、キャプテンだからこそ、自分が姿勢だけではなく、プレーでも突き抜けなければいけないという意識を持つようになった。その意識が、練習や試合でのパフォーマンスにつながり、間違いなく日本代表へとつながったと、僕は思っている。

 2017年のE-1選手権を最後に、日本代表には呼ばれる機会がなくなっていた。ずっと海外でプレーしたいという思いを抱いていたように、常に日本代表にも選ばれたいという想いはあった。

 フロンターレでタイトルを獲り、これだけの結果を残しても、日本代表には選ばれないのかと思った時は、もう縁がないのかもしれないと考えたこともあった。だけど、キャプテンになって、さらに自分に自信を持つことができるようになり、選んでもらえさえすれば、絶対に活躍できるという思いはあった。

 その自信を得られたのは、フロンターレでキャプテンを務めたことで、自分自身のプレーが成長したことが大きい。

 だから、カタールW杯の最終予選を戦っていた2021年6月に選ばれた時からカタールW杯本大会まで、自分のサッカー人生をかけて1日、1日が勝負だと思って、自分に緊張感を与え続けることができた。

◆第3回につづく>>


【profile】
谷口彰悟(たにぐち・しょうご)
1991年7月15日生まれ、熊本県熊本市出身。大津高→筑波大を経て2014年に川崎フロンターレに正式入団。高い守備能力でスタメンを奪取し、4度のリーグ優勝に貢献する。Jリーグベストイレブンにも4度選出。2015年6月のイラク戦で日本代表デビュー。カタールW杯スペイン戦では日本代表選手・最年長31歳139日でW杯初出場を果たす。2022年末、カタールのアル・ラーヤンに完全移籍。ポジション=DF。身長183cm、体重75kg。

プロフィール

  • 原田大輔

    原田大輔 (はらだ・だいすけ)

    スポーツライター。1977年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌『ワールドサッカーグラフィック』の編集長を務めたのち独立。Jリーグを中心に取材し、各クラブのオフィシャルメディアにも寄稿している。主な著書に『愛されて、勝つ 川崎フロンターレ「365日まちクラブ」の作り方』(小学館クリエイティブ)など。

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