堂安律がW杯で結果を残せたわけ。「大会前から自分が森保監督のファーストチョイスではないことは理解していた」 (3ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text by Takamura Misa

 それに、日本代表でも21歳で活躍できた時はメディアにも僕の発言を取り上げてもらうことが多かったけど、結果から遠ざかるにつれ、何を言っても響かないというか、取り上げられることもほぼなくなりましたしね。それはサポーターも同じで、活躍している時は発言に対する"アンチ"の意見も多かったのに、活躍できなくなってからはその声さえ聞かれなくなった。その状況に直面した時に、ああ、誰も僕に期待してないんやな、と。

 それに気づいてからは、期限付き移籍をしたビーレフェルト(ドイツ)でも、復帰したPSVや現所属のフライブルクでも、とにかく目に見えたピッチでの結果を自分に求めてやってきた。そしたら、今シーズンに入って、ようやくイメージどおりのプレーができることが増え、自然と自分に"本物の自信"が備わっていくのを感じられたというか。以前のように、虚勢を張るというか、半分は自分を奮い立たせるための『俺ならやれる』ではなく、心の底から『俺ならやれる』と思えるようになった」

 そして、その本物の自信を携えて挑んだW杯だったからこそ、初めての舞台を心から楽しむことができ、それがピッチでの躍動につながったと振り返った。

「正直、これまでの流れで、大会前から自分が森保(一)監督のファーストチョイスではないことは理解していました。何より、同じポジションを争う(伊東)純也くんがリーグ・アン(スタッド・ランス所属)で調子がいいことも、これまでの代表戦で結果を残してきたことも周知の事実でしたしね。

 だからこそ、僕自身は大会前から先発を目指しながらも、途中出場でピッチに立つ自分をより具体的にイメージしていました。これもある意味、自分に自信があったからこそ、というか。以前の僕なら、自分が代表で何の結果も残せていないことは棚に上げて、『俺のほうが絶対にやれるのに、なんで、先発じゃないねん』と言っていたかもしれないけど(笑)、素直に現実を受け入れたうえで『大丈夫。俺ならやれる』と心の底から信じられた。

 実際、大会直前のカナダ戦も後半からの出場でしたが、まったく気持ちは揺れなかったし、『今の自分に与えられる時間のなかで結果を残せばいい』ということしか考えていなかったですしね。それはドイツ戦も同じで、以前ならきっと『20分しかないやん』と思っていたはずなのに、めちゃめちゃ冷静に『20分でも問題ない。十分、自分を示せる』と思って試合に入れた。

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