ベルギーでのクロアチア戦実況であふれる日本愛。自国リーグ経験者をほめ讃えていた (4ページ目)

【元VVVフェンロの吉田と紹介】

　後半なかば、堂安律のシュートをニコラ・ブラシッチが体を張ってブロックし、両者は痛みでピッチに倒れ込んだシーンがあった。心配そうにヨシュコ・グヴァルディオルがふたりに近寄り、まずは堂安、次にブラシッチに声をかける。このシーンをヨースはこう実況した。

「両チームの選手の間で、すばらしい雰囲気が生まれています。これぞフットボールのあるべき姿。お互いに結果を求めて戦いつつ、リスペクトしあっています。そのことを見ることも、感じることもできます」

　試合はPK戦にもつれ込んだ。吉田麻也がペナルティスポットに向かう時、ヨースは現所属先のシャルケでなく「元VVVフェンロの吉田が蹴ります」と紹介した。ベルギーのオランダ語圏メディアは、オランダサッカーのことをよくフォローしているからだ。

　吉田のPKは無情にもストップされて、日本は絶体絶命のピンチ。そして最後はマリオ・パシャリッチがPKを決めて、クロアチアが準々決勝に駒を進めた。

　クロアチアの選手たちがピッチで喜ぶなか、ヨースは先制点を挙げたペリシッチの姿に目を凝らす。

「見てください。クロアチアは全員キーパーに駆け寄っていますが、ペリシッチだけは日本の選手に声をかけに行っています。すばらしいシーンです。彼はこの（仲間たちの）輪の中にはおらず、（日本の選手たちがいる）センターサークルの中にいるのです。すばらしい試合でした。この試合に敗者はいません」

　ベスト８を賭けたゲーム以上に、なにかを感じ取ることのできる試合だった。日本vsクロアチアの実況がヨースでよかった。そう、心から思っている。

【筆者プロフィール】中田徹（なかた・とおる）
スポーツライター。 神奈川県出身。オランダを拠点に、2002年よりサッカーを主に取材。オランダスポーツジャーナリストクラブ会員。

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【profile】
中村憲剛（なかむら・けんご）
1980年10月31日生まれ、東京都小平市出身。久留米高校から中央大学に進学し、2003年にテスト生として参加していた川崎フロンターレに加入。2020年に現役を引退するまで移籍することなく18年間チームひと筋でプレーし、川崎に3度のJ1優勝（2017年、2018年、2020年）をもたらすなど黄金時代を築く。2016年にはJリーグMVPを受賞。日本代表・通算68試合6得点。ポジション＝MF。身長175cm、体重65kg。

佐藤寿人（さとう・ひさと）
1982年３月12日生まれ、埼玉県春日部市出身。兄・勇人とそろってジェフユナイテッド市原（現・千葉）ジュニアユースに入団し、ユースを経て2000年にトップ昇格。その後、セレッソ大阪→ベガルタ仙台でプレーし、2005年から12年間サンフレッチェ広島に在籍。2012年にはJリーグMVPに輝く。2017年に名古屋グランパス、2019年に古巣のジェフ千葉に移籍し、2020年に現役を引退。Ｊリーグ通算220得点は歴代1位。日本代表・通算31試合4得点。ポジション＝FW。身長170cm、体重71kg。