三笘薫と田中碧、以心伝心のスーパーゴール。「なぜあそこに走り込んでいたのか...」「ワンチャンあるかなと」 (2ページ目)

  • 了戒美子●取材・文 text by Ryokai Yoshiko
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

足が長くてよかった(笑)

 得点は幼馴染の「薫さん(三笘薫)」のアシストがあってのものだった。

「(堂安)律からの折り返しでワンチャンあるかなと思った。(ゴールライン際でボールが)何とか残るんじゃないかなと信じていた。(三笘)薫さんがうまく残してくれた」

 肉眼ではラインの外に出たかに見えたボールは、VAR判定の結果わずかに(数ミリだったとの報道もある)ラインにかかっていた。堂安の折り返しに走り込んだ三笘は「1ミリでも残そうと思った。足が長くてよかった(笑)」とギリギリのところでボールに追いついたことを説明した。

 三笘がゴール前に送ったボールに飛び込んだのは田中。「なぜあそこに走り込んでいたのかわからないけど」と三笘は振り返るが、田中は右足ふとももで押し込み、この日の追加点とした。

 気持ちで押し込んだのでは、との問いに、きっぱりこう言いきった。

「いや、気持ちじゃないですね、別に。ずっとやってきたので、あそこに入っていくのは。まあ、うまく結果を残せたのはよかったかなと思います」

 あくまで練習とこれまでの経験の結実であることに胸を張った。

 田中は2021年の夏、ドイツ2部のフォルトゥナ・デュッセルドルフに移籍した。多くの海外移籍の場合と同じようにここで海外サッカーの厳しさを知り、成長したい、ワールドカップにつなげたい、できればその先にビッグクラブのチャンスがあれば、という移籍だった。

 だが、これはドイツ人にしてみれば、とても不思議なものだった。Jリーグという自国のリーグで優勝するようなチームにいるほうが、自国の代表に入るにはいいのではないか。わざわざドイツの2部にきてワールドカップを目指す、ということがなかなか飲み込めていないようだった。

 田中はそんな主旨の質問が出るたびに「2部からの日本代表は可能だ」と答えていた。自分にあったオファーのなかからデュッセルドルフという環境でプレーすることを選択したのだから、ここで成長して先につなげるしかないという決意もあったのだろう。

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