サッカー日本代表のプレースタイルはどうあるべきか。W杯過去6大会は「嗜好性を選んで敗退」か「合理性を追求してベスト16」

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

激闘来たる! カタールW杯特集

注目チーム紹介/ナショナルチームの伝統と革新 
第11回:日本

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「日本らしさ」の代償

 カタールW杯で7大会連続出場となる日本の過去6大会の戦績は、グループリーグ敗退が3回、ベスト16が3回だ。

カタールW杯で7大会連続出場となるサッカー日本代表カタールW杯で7大会連続出場となるサッカー日本代表この記事に関連する写真を見る 韓国との共同開催だった2002年、2010年南アフリカW杯、そして前回のロシアW杯でグループリーグを突破している。グループリーグを突破できなかったのは、初出場の1998年フランスW杯、2006年ドイツW杯、2014年ブラジルW杯だ。

 過去6大会のプレースタイルから言うと、奇妙に思えるかもしれないが、「日本らしさ」を発揮しようとした大会ほど結果を残せていない。

 何が「日本らしさ」なのかは議論の余地があると思うが、日本のサッカーファンが祝福したくなるようなプレースタイルを志した時ほど負けている。「その国らしさ」は長所を発揮することで表れるので勝ちやすくなるはずなのだが、日本の場合はむしろ負けやすくなっている。その典型が2006年と2014年だった。

 ドイツW杯でジーコ監督に率いられたチームは、代表人気のピークだった。中田英寿、中村俊輔、小野伸二など逸材が揃い、攻撃型の編成で臨んだが1分2敗で敗退。ブラジルW杯のアルベルト・ザッケローニ監督の時は、本田圭佑と香川真司が両輪となって代表史上最高の攻撃力があったが、やはり1分2敗だった。

 実は不思議なことではない。この2大会の日本は言わば強豪国のように振る舞ったのだが、そこまでの実力がなかったにすぎない。

 強豪国は基本的にボールを保持して攻撃し、相手を圧倒して勝利する。過去の優勝国ではブラジル、ドイツ、スペイン、アルゼンチン、優勝はしていないがオランダもそうだ。イタリア、ウルグアイは例外的に守備的なスタイル、フランスとイングランドは中間的だがやや攻撃寄りだった。

 日本が強豪国のような戦い方をしても格上に力負けするか、足下をすくわれる結果になるのは、むしろ当然の帰結だったと言える。

 逆に、中堅ないし弱小としての戦いに徹した時はグループリーグを突破している。2002年はフィリップ・トルシエ監督が守備戦術を整備してベスト16。2010年の岡田武史監督は「ベスト4」を目標に掲げて当初は強豪国的なスタイルを目指したが、大会直前に守備型に直してやはりベスト16まで勝ち上がった。

 微妙なのは前回のロシアW杯だ。大会直前に西野朗監督が就任し、ほぼ素の状態で臨んでいる。攻撃的とも守備的とも言い難く、戦術的な縛りの少ないスタイルは「日本らしく」あるよりほかになく、JFA(日本サッカー協会)の田嶋幸三会長が「ジャパンズ・ウェイだった」というコメントはまさにそうだったと思う。

 言い方を変えると、日本らしい何かがあったというより、何も用意できなかった結果としてのジャパンズ・ウェイである。

 日本が勝利したのは、初戦のコロンビア戦だけなのだ。しかも相手は開始早々に退場で1人を失った試合だった。セネガル戦はドロー、ポーランドとベルギーには負けている。ジャパンズ・ウェイの日本がベスト16だったのは確かだが、ジャパンズ・ウェイだったからベスト16まで進めたとは言えないと思う。

 11人同士で戦って唯一勝ち点を獲れたセネガル戦で目立っていたのは、守備における機動力とハードワークで、これを日本らしさと言うなら2002年と2010年にも共通している長所ではある。ただ、おそらくその意味でジャパンズ・ウェイと言っていたわけではないだろうし、1つのドローでは成果として大きいとは言えない。

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