サッカー日本代表のプレースタイルはどうあるべきか。W杯過去6大会は「嗜好性を選んで敗退」か「合理性を追求してベスト16」 (2ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji
  • photo by Getty Images

中堅国の基本スタイルでベスト16

 各国の代表チームにはそれぞれのカラーがあるが、プレースタイルは一定しているようで実はそうでもない。アルゼンチンは正反対の2つのスタイルが並行してあり、ドイツは時代によって振れ幅がある。イタリアのように伝統の守備型から転換したチームもある。一定しているように見えるブラジルでも揺れはあった。

 プレースタイルを形成しているのは主に「合理性」と「嗜好性」だ。

 勝つためにどうプレーすべきかが合理性、どう勝ちたいかが嗜好性である。5回優勝しているブラジルでは、優勝しても「ブラジルらしくない」と批判されることすらあり、それだけ自国のプレーに対する嗜好性が強いわけだ。

 一方、中堅国や弱小国に嗜好性を追求する余裕はなく、強豪国と対戦すれば必然的に守勢に追い込まれやすいので、勝つための合理性が優先されるケースが多くなる。

 初参戦の1998年の日本は、意外と攻撃的なプレーをしていた。アルゼンチン、クロアチアに対しても臆することなく攻めていて、試合展開は互角に近い内容だった。嗜好性が強く出たプレーぶりだったのだが、それを狙ったというよりワールドカップでの立ち位置もよくわからなかったので、やれることをやった結果だったと思う。

 中田英寿、名波浩、山口素弘のMFトリオを中心とした素早いパスワークは、目立っていたが得点力が弱く、日本らしさを発揮したものの3戦全敗に終わっている。

 2002年は開催国で組み合わせにも恵まれていたが、守備を整備して簡単には負けないチームに仕上げていた。1998年のような小気味のいいパスワークはあまり見られず、コンパクトな陣形を保って球際で戦うスタイル。当時の中堅国におけるスタンダードだった。この時が初のベスト16である。ただ、今にして思えばここからある種の迷走が始まっている。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る