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羽生直剛の日本代表ベストゲーム。試合後「オシムさんが目を合わせて、うなずいてくれた」 (4ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Jinten Sawada/AFLO

 羽生は「親子そろって名言みたいなことを言ってくるんだなと思ったんですけど(笑)」、結局、アマル監督に背中を押される形で、代表へと向かうことを決めた。

「ここでチャレンジしてダメだったらいいや、っていう開き直りみたいな感じがありました」

 背水の陣を覚悟して臨んだこの試合、停滞したまま0-0で終わった前半を受け、羽生は後半開始から稲本潤一に代わって途中出場する。

「僕にできることがそんなに多かったわけじゃないので、とにかく(チームを)活性化するっていうところを目指して入りました」

 その言葉どおり、羽生は空いたスペースを見逃さずに走り込み続け、いくつもチャンスを作り出した。

 結果を言えば、試合はスコアレスドローに終わるのだが、ハーフタイムを境に、日本代表というチームに血が通い始めたことは明らかだった。

「僕がいろんなところに顔を出すことによって、結果的に他の人にボールが入るシチュエーションが増える。オシムさんも、僕がボールを持ってひとりで仕掛けてゴールを決めるとかっていうんじゃなく、僕をおとりに使うことで個性あるタレントに多くのボールが入るとか、多くの選択肢が生まれるとか、そういうイメージだったと思います。自分がアクションを起こすことで(チーム全体が)動く。まずは自分が率先して動こう、という気持ちはありました」

 とはいえ、羽生は正直なところ、この試合でのプレーを細かく記憶しているわけではない。「後半から入って、(自分が出場した日本代表戦のなかでは)一番明確に流れを変えたかなっていう感覚が残っている」という程度だ。

 だが、そんなおぼろげな記憶のなかには、はっきりと脳裏に刻まれていることもある。

「その試合のあとに、オシムさんが『おまえ、今日はよかったぞ』みたいな感じで、目を合わせて、うなずいてくれたのは覚えていて......。今日は少し認められたのかな、みたいなことを感じた記憶は残っています」

 もちろん、かの名将は甘い顔を見せてくれただけではない。当時の試合映像を見返してみると、試合が残り10分になったあたりで、大きく「ハニュー!」と呼ぶ声が聞こえてくる。

 声の主は、オシム監督だ。

「その時に何を言われたかは覚えていませんが、ジェフの時から、試合中に呼ばれることはよくありました。いや、もう......、呼ばれた時には何を言われるのかと......、振り向くのがめっちゃ怖かったですから(苦笑)」

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