宮本恒靖が明かす「フラット3」の裏話。トルシエ監督には伝えず「微調整」していた (2ページ目)
斬新な戦術ゆえ、当然馴染みはなかった。それでも宮本は、「やりにくいとかは、全然なかった」と振り返る。
「むしろ、もっとこれぐらい積極的にラインを上げて、"攻める守備"があってもいいというか、たぶん対戦相手のFWも、それまでにこういう戦術を持つチームと対戦したことがないので、明らかに困っていることが多かったんですよね。それを見て、すごく面白かったですし、こっちがコントロールしているっていう感覚はありました」
宮本によれば、フラット3を機能させるためのポイントは、「ファーストディフェンスの強さ。それプラス、相手にバックパスさせるっていうことをいかに引き出すか」である。
「相手が(ボールを)下げたな。じゃあ、どんどんラインを上げていこう、と。そうやってフィールドを圧縮することで、もう相手が下げざるを得ないっていうところにもっていく時の、(味方同士の)お互いの距離感とか、スピード感とか、圧力の強さ。それがフラット3のキモでした」
4年間かけて磨き上げてきた"伝家の宝刀"は、ワールドカップ本番に向け、確実に切れ味を増していた。
「最初は、みんな何が何でもラインを上げてしまうとか、ラインがそろわないとか、いろいろな問題があったんですけど、お互いのコンビネーション自体が上がっていったところもありますし、戦術に対する全体の理解も深まったこともあり、間違いなくよくなっていたところはあったと思います」
ただその一方で、「ワールドカップが近づくにつれ、研究されている感があった」のも確かだった。
それが顕著な形で表れたのが、大会直前の2002年5月、ヨーロッパ遠征で行なわれたノルウェーとの親善試合である。
「ふだんであれば、オフサイドをとれるところでとれない。ラインを上げるタイミングでボールがワンタッチで入ってくる。実際に失点にもつながっていましたし、全部いいタイミングで入れ替わられているし、『これはもうやられてしまうな』っていうところはありました」
そんな不安が大事なグループリーグ初戦、ベルギーとの試合で的中してしまう。
「ベルギーもその(ノルウェー戦の)映像を見たでしょうし、実際、自分が(ベルギー戦に途中交代で)ピッチに入って、同じようにラインを下げるタイミングで相手にブロックされて下げられなかったっていうところで失点(2-2の引き分けとなる同点ゴール)になりましたから」
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