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宮本恒靖が明かす「フラット3」の裏話。トルシエ監督には伝えず「微調整」していた (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 このままでは同じことを繰り返してしまう――。そう危惧していたのは、宮本だけではなかった。

「ノルウェー戦の残像がみんなの頭にあったなかでベルギー戦をやって、みんなの思いがもう確信めいたものになっていて、それぞれに抱えていたと思うんですよね」

 ベルギー戦を終え、静岡のキャンプ地に戻り、多くの選手が大浴場に集まっている時だった。「誰が言い出すでもなく話が始まって、『オレもそう思う』『じゃあ、練習でやってみようか』っていう感じ」で、自然と問題点のすり合わせが行なわれた。

 宮本の言葉を借りれば、「フラット3の微調整」である。

「(背後をカバーするために)ラインを深くするというより、懐をちょっと広く持とうよ、というような感覚です。トルシエ監督がやってきた戦術に対して、もちろんリスペクトは持ちつつ、でも、こうしたほうがもう少しうまく守れるであろうという、その方法をみんなで探しつつやったというところです」

 具体的には、こうだ。

「例えば、それまではボールが下げられた時にラインを上げて、ボールホルダーがワンタッチで蹴ってくるのがわかったぐらいのタイミングでラインを下げていたんですけど、相手はその対策を戦術として持っていて、3人目の選手が(フラット3の背後を狙って)走ってくるのが見えている時、あえて上げずに、ちょっと後ろ側(半身で構えた時の後ろ足側)に体重を残しておこうよというような、そんなイメージです。本当に微妙なんですけど(苦笑)、そのくらいの感覚的なものです」

 グループリーグ第2戦、ロシアとの試合を前にした横浜での練習で、選手同士の感覚を確認し合ったことを宮本は記憶している。

「監督はいつもどおりのことを求めるので、いつもどおりにやっているんですけど、選手同士では『今の場面は、試合になったらもうちょっと早めに下げよう』と。練習の時に、そういうことをやっていたのは覚えています』

 試合直前の応急処置ではあったが、言い方を変えれば、そんなわずかな確認作業だけで微妙なさじ加減すらも共有できるほど、選手同士の意思疎通ができていた。

「もうお互い『(ラインを)下げるぞ!』とか言わなくても、これくらいだなっていう感覚で合わせられるようなコンビネーションはありました」

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