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原口元気が洩らしていた弱音。「気持ちが乗ってこない」から変わっていったW杯最終予選の心情 (2ページ目)

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • 岸本勉●撮影 photo by Kishimoto Tsutomu

「気持ちが乗ってこない」

 今年に入ってからは、ホームの中国戦では85分、サウジアラビア戦では90分からの出場。いずれにせよ調子を上げていったチームとは裏腹に、原口の出場機会は短くなっていった。

 気になったのは、初戦オマーン戦から数日経って、試合を振り返るなかで口にした言葉だった。

 ロシアW杯に出場した頃に比べて「気持ちの強さをうまく表現できなかった」とし、「初心に帰ることがすごく大事」と、難しい胸のうちを明かした。オンラインでの取材対応ではあったが、意気消沈ぶりが伝わってきた。敗れたうえ、45分で交代させられた試合の直後だったからいたし方ない面もあるが、W杯の予選中、ここまで気弱なコメントを口にする選手はあまり見かけない。

「負けてよかったわけではないけれど、いい教訓になるかも。自分には経験も熱い気持ちもあるので......」

「前回W杯に出場する前のほうが、飢えのような気持ちは強かった。自然なことだとは思うけれど、(今は)気持ちが乗ってこない。ベルギー戦のリベンジをしたい気持ちはとても強いです。その熱意を取り戻せるか。気持ちの部分が出せないなら、試合に出ないほうがいい」

 感情を表に出すタイプである。カっと頭に血が上ることもあれば、悔しくて涙を見せることもある。もちろん、うれしい時の喜びようもとてもわかりやすい。そう考えれば、この時の赤裸々な気持ちの吐露も、原口らしいと言えばその通りなのだが、メンタルは大丈夫なのか、代表を引退するなどと言い出しはしないかと、心配になるほどだった。

 だがその後の原口は、短い出場時間のなかで自身の役割を変化させていった。豊富な運動量で90分間を走り回り、惜しみなく体力を使いきるというのではなく、このチームにおけるベテランとして、前回大会経験者としての振る舞いを見せるようになった。

 84分から投入された先日のオーストラリア戦もそうだった。同時に投入されて2得点をあげた三笘薫のような派手な活躍ぶりではなかったが、中盤で気を吐き、チームに闘志をもたらした。プレーは冷静で「バランスを取ること、失点しないこと」を意識して、0-0のまま終わらせることを念頭に置いた。

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