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中村憲剛「オレが持ったら?」岡崎慎司「裏っすよ!」。ふたりの約束が生んだW杯最終予選の劇的ゴール (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by AP/AFLO

 試合が行なわれたパフタコールスタジアムは、それほど大きな会場ではなかったが、大観衆が詰めかけ、ウズベキスタンが攻めるたびに大歓声で包まれた。

 そんな雰囲気にレフェリーも飲まれたのか、不可解なジャッジが続出。試合終盤には肩から相手にぶつかっただけの長谷部誠がレッドカードを受けて退場となり、さらには岡田武史監督も抗議を理由に退席処分となっている。

「それまでは、アジアのチーム相手なら1点とれば僕らがペースを握れると思っていたんですけど、あの試合は逆にプレッシャーが厳しくなった。芝生もボコボコして(パスをつなぐのが)難しく、何となく相手寄りのペースで試合が進んでいた印象は残っています。初めて先発で出て、しかもアウェーでの試合だったので、『これがワールドカップ予選なんや』って感じでした」

 それでも、自らのゴールについての記憶は鮮明だ。

 前半9分、カウンターから中村憲剛が仕掛けたドリブルはカットされるも、セカンドボールを拾った長谷部誠が前方の中村憲へパス。再びボールを受けた中村憲はすばやくターンすると、DFラインの背後へふわりと浮かした柔らかなラストパスを送った。

 そこへ絶妙なタイミングで走り込んでいたのは、岡崎である。

 ゴールへの執念をにじませた背番号9は、相手DFと競り合いながらトラップすると、体勢を崩しながらも左足シュート。これはGKにセーブされるが、跳ね返ってきたボールをダイビングヘッドで押し込んだ。

「あの時の感覚については、当時もよく聞かれたんですけど、ボールが跳ね返ってくる時に"止まって見えた"っていうのはありますね。GKの動きもゆっくりに見えたというか、一瞬のことでしたけど、僕の中ではそういう感じに見えていました」

 だが、冷静にGKを外して打ったダイビングヘッドもさることながら、それ以上に特筆すべきは動き出しの速さだった。

 当時の映像を見直してみると、長谷部が中村憲へパスを送った瞬間、すでに岡崎が走り出していることがはっきりとわかる。中村憲にボールが届くより前に、である。

「ハセさんが持った段階で、もう憲剛さんへ(ボールが)行くんじゃないかっていう予測はしていたと思います。だから、完全にイメージどおり。狙いどおりに憲剛さんからボールが来たっていう感じでした」

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