中村憲剛「オレが持ったら?」岡崎慎司「裏っすよ!」。ふたりの約束が生んだW杯最終予選の劇的ゴール

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by AP/AFLO

カタールW杯アジア最終予選特集

W杯最終予選で日本を救った一撃
日本1-0ウズベキスタン(2009年6月6日)
~岡崎慎司(前編)

W杯アジア最終予選において、ラクな試合などひとつもない。つまり、W杯出場切符を獲得することは、決して簡単なことではないのだ。ゆえに、現在6大会連続でW杯出場を決めている日本であっても、最終予選では何度となくピンチを迎えてきた。しかしそのつど、日本代表を救う劇的なゴールを決めてきた選手がいる。ここでは、そんな"大仕事"を果たした男たちにスポットを当てる――。

 2009年6月6日、ウズベキスタン・タシケント。日本1-0ウズベキスタン。

 日本が2010年ワールドカップ南アフリカ大会への出場を決めた試合である。

 この重要な一戦で決勝ゴールを決めたのは、岡崎慎司。現在では、A代表通算119試合出場、通算50ゴールという輝かしい記録を持つ日本史上屈指の点取り屋も、当時は前年に北京五輪に出場し、A代表で出場機会をつかみ始めた23歳だった。

2010年南アフリカW杯最終予選のウズベキスタン戦で会心の一発を決めた岡崎慎司2010年南アフリカW杯最終予選のウズベキスタン戦で会心の一発を決めた岡崎慎司この記事に関連する写真を見る ようやく頭角を現してきたばかりの新鋭FWは、いかにして大仕事を成し遂げ、ニューヒーローとなったのか。

「僕のなかで、もちろん印象深いゴールではあるんですけど......」

 ためらいがちにそう語る岡崎が、大一番を振り返る。

        ◆        ◆        ◆

 まずは、この試合までの最終予選の流れを整理しておこう。

 オーストラリア、ウズベキスタン、カタール、バーレーンと同組だった日本は、この試合を前に5試合を終え、3勝2分けの勝ち点11でグループ首位に立っていた。

 日本はウズベキスタンとのアウェーゲームに勝てば、ワールドカップ出場が決まる。そんな状況にあった。

 その一方で、岡崎自身は4試合に途中出場しただけ。玉田圭司、大久保嘉人、田中達也ら、先輩FWの壁は厚く、先発メンバーに名を連ねたことはなかった。

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