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柱谷哲二が語るドーハの悲劇。
イラク戦で投入してほしかった選手の名は (5ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・構成 text by Sato Shun
  • 甲斐啓二郎●撮影 photo by Kai Keijiro

 試合は、カズの先制ゴールでリードした。

 だが、イラクは大量点を取ればW杯出場の可能性が残されていたため、失点しても怯むことなく攻撃を仕掛けてきた。日本は受け身に回り、勢いに押される展開になった。

 ハーフタイムに入ると、選手は自分の近いポジションの選手と意見をぶつけ始めた。ロッカールーム内に大きな声が響き、いつもの静寂と冷静さが失われていた。

「シャラップ!!」

 オフトが怒鳴ると、ロッカールームは水を打ったように静まり返った。そして、ホワイトボードに「GO TO USA 45MIN」と書いた。オフトの指示は、それだけだった。

「ヨッシャー!」

 柱谷は大きな声を出して気合いを入れ、再び戦場へと向かった。だが、気持ちはファイティングポーズを取っていたが、肉体的には生気が失われていた。

「後半、自分の視野がどんどん狭く、暗くなっていったんです。体が本当にキツくて、声を出し続けていないと倒れるんじゃないかっていう状態だった。同点に追いつかれたゴールは俺がかぶったからだけど、いつもボールに触れているはずなのに跳べていない。普段できていることが、その時はできていなかった。自分の体が消耗して、もうありえない状況だった」

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