DFの要、熊谷紗希が涙の後に語った「なでしこジャパンの課題」 (2ページ目)

  • 了戒美子●取材・文 text by Ryokai Yoshiko 早草紀子●撮影 photo by Hayakusa Noriko

「このままじゃいけないっていうことを、全員が再確認できたと思うから、こっち(フランス)のシーズンが終わって5月からの準備期間と、W杯前の2試合(イタリア戦、ニュージーランド戦)しかないけど、限られた時間のなかでやるしかない」


 彼女にはジレンマがあった。個人の力を上げることこそが、自分のためはもちろん、なでしこジャパンのためにもなると考えた末の海外移籍だった。実際、欧州トップクラスの強豪クラブ、リヨンでコンスタントに出場し、この上ない経験を積んだ。

しかし、個の力は上がったが、欧州でプレーするがゆえになでしこジャパンのチーム練習に参加する回数が減り、連係面を向上させる時間が減った。代表の活動日程が世界で統一されている男子では起こりえない、女子サッカーならではの問題があり、そのあおりを食らった格好だ。


 W杯カナダ大会決勝後、涙のあとがまだ消えないまま、熊谷は言った。

「個の能力を上げるために海外に出て、できた部分もある。ただ、この大会はチームとしても個人としても、最後の決勝戦はできなかった部分があった。やはり、ピッチの中で、90分の中で修正していかなきゃいけない。そこのところは、ピッチに立っている選手にしかできないし、自分が後ろ(DFライン)からもうちょっと声をかけることもできたかもしれない。チームとしてもう1回立て直そうということを(試合中に)できたんじゃないか。そういう悔しい気持ちはあります。それでも、自分が4年間やってきたことは、足りない部分はあったとしても間違っていなかったと思います」

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