【長嶋茂雄が見たかった。】日本中が泣いた長嶋茂雄の引退試合「この世界から野球というものがなくなっちゃうんじゃないか」 (2ページ目)
駒大3年時、中畑清さんは寮のテレビで長嶋の引退試合を観た
長嶋が引退試合に臨んだ日。駒澤大学野球部の3年生だった中畑は寮のテレビの前に座っていた。
「秋季リーグ戦の真っ最中。ダブルヘッダーの2試合目が終わる頃に寮に着いて、ユニフォームのままで自分の部屋のテレビをつけた。
画面に向かって『長嶋、やめるな~』と、野球部員みんなが叫んでいたのを覚えている。叫び声がそのうちに号泣に変わっていったんだよ」
野球部の寮のあちらこちらから、泣き声が聞こえてきた。
「野球部員全員が同じことをするなんて、考えられないよな? でも、寮のすべての部屋でテレビを見ていたはずだよ。
あの時のことは本当に忘れられないね。太陽のような人がいなくなることが信じられなかった。長嶋さんがユニフォームを脱ぐ時が来るなんて考えたこともなくて、実際にそのシーンを見せられたショックがあった。この世界から野球というものがなくなっちゃうんじゃないかとも思った」
物心ついた時から、世界の中心には長嶋がいた。
「何をやってもかっこよくて、みんなが長嶋さんについて話をする。日本中で長嶋茂雄を知らない人はひとりもいなかった。野球界だけじゃなくて、日本の宝だったと思う。
長嶋さんが引退したことで、『次は俺がやってやろう』とはならないよ。ショックのほうが大きかったな。そのあとも、長嶋さんの引退をずっと引きずっているところがあったよ。元気が出なくて......」
中畑が読売ジャイアンツからドラフト指名されたのは翌年のことだ。
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