【プロ野球】"鬼軍曹"の指導哲学 西武・鳥越裕介ヘッドが語る「逃げない」「妥協しない」チーム再建論 (4ページ目)
だが、それでもキッパリ言った。
「おまえのレフトと中村晃のレフトを比べたら、おまえのレフトでは勝てねぇ。だからファーストだ。おまえにとっても絶対ファーストでやったほうが長生きするから、やろうや」
当時、内川氏は33歳。体力などさまざまな点で衰えの出る年齢に差しかかってきたが、どうすれば少しでも長く現役生活を続け、充実させることができるか。
内川氏は2000年ドラフト1位で大分工業高から横浜に入団した当時、ショートを守っていた。つまり、もともと守備はうまい選手なのだ。
33歳で始めた、本格的なファーストへの挑戦。鳥越コーチは「逃げるな」と叱咤した以上、自分も逃げない覚悟を持たなければと決意した。
それから3年後の2019年、内川氏は一塁手として自身初のゴールデングラブ賞を獲得する。鳥越コーチにとっても、大きな意義のある表彰だった。
「僕もすごく勉強させてもらいました。『逃げるな。ゴールデングラブを獲るぞ』と言うのがスタートで、最終的にエラーゼロで獲りましたからね。僕がいなくなってから獲りましたけど(笑)」
2018年、鳥越コーチはロッテのヘッドコーチ兼内野守備・走塁コーチに就任する。ダイエー(現・ソフトバンク)時代に一緒にプレーした、後輩の井口資仁監督に請われたからだ。
コーチは選手の人生を預かっている。だから、妥協は許されない──。2025年、西武のヘッドコーチに就任した今も、同じ姿勢で球団再建に挑んでいる。
著者プロフィール
中島大輔 (なかじま・だいすけ)
2005年から英国で4年間、当時セルティックの中村俊輔を密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『山本由伸 常識を変える投球術』。『中南米野球はなぜ強いのか』で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。内海哲也『プライド 史上4人目、連続最多勝左腕のマウンド人生』では構成を担当。
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