【プロ野球】"鬼軍曹"の指導哲学 西武・鳥越裕介ヘッドが語る「逃げない」「妥協しない」チーム再建論 (2ページ目)
両球団を指導する間、周囲の目に映ったのが「厳しい」という姿勢だった。
「『厳しい』とは何をもってそう言うのか、僕はわからない。勝つためにどうするか。それを『厳しい』と言う人がいるだけで。じゃあ、『甘いんじゃないの?』って言う人もいると思いますし。勝負の世界は厳しいものじゃないですか。それこそ、大谷翔平がどれだけ節制しているのか」
令和の今、あらゆる競技でコーチのあり方が見直され、暴力や罵詈雑言はもちろん、ハラスメントにあたる言動はご法度だ。
多くの指導者は昭和式のやり方で現役時代を過ごしたこともあり、今の選手との適切な距離感を模索している。去年までの西武では取り組み方の甘い選手がいても、コーチが気を遣いすぎて指摘できなかったという話も耳にした。そうした積み重ねも「ゆるい」雰囲気を招いたのだろう。
【イップスをつくったらコーチをやめる】
一方、周囲に「厳しい」と言われる鳥越コーチに指導者の役割を尋ねると、核心をつく答えが返ってきた。
「はっきり言って、僕らなんか別にいなくてもいい存在です。イチローにしても、大谷にしても、コーチなんていらない人はいらないじゃないですか。彼らをサポートできる体制が整っていればいい。でも、全部が全部そういう人ではないですし。チームでやるスポーツなので、そういった意味では、いなければいけないのかなと思います。こういう話は難しいです。僕らの仕事には答えがないので。答えは、選手自身がつくり出すものだと思います」
鳥越コーチは選手時代の自身について、「妥協しまくっていた」と振り返る。現在のように「厳しい」と言われる姿勢になったのは、現役生活に終止符を打った翌年のことだった。
「自分のことではなく、人のことになった瞬間から変わったような気がします。自分は妥協しまくっていたけど、コーチは人の人生を預かっているので」
2006年限りでソフトバンクの選手として現役引退し、翌年から同球団のコーチに就任した。担当は二軍内野守備・走塁コーチ。この役割を引き受けるうえで、ひとつの覚悟を決めた。
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