【プロ野球】3度の手術、2度の地獄を越えて 近藤弘樹が「投げられない日々」の先にスタートした第二の野球人生 (3ページ目)
近藤はヤクルトでの4年間について、「いいスタートは切れたんですけど......」と言い、続けた。
「そのあとは球団の足を引っ張ってばかりで、手術もリハビリも含め、お金だけかかる選手でした。自分も苦しかったですけど、球団にはほんと申し訳ない気持ちが強いです。今年亡くなられた衣笠(剛)会長は『おまえのピッチングをまた見たいから頑張れ』と、何度も励ましてくださって。もう一度ピッチングをお見せすることができなくて、本当に申し訳ない気持ちが強いです」
戸田球場での約3年半、近藤は地面が凍結するような寒い日も、灼熱の夏の日も、一喜一憂せず、不撓不屈の精神で復活を目指してリハビリに励んだ。
「うーん、やれることはやったという気持ちです。やっている最中はメンタル的にも相当きつくて、やる気が出ない時もありましたが、それでもしっかりやれました。2度の地獄を乗り越えたかと言われたら、結局はダメな状態で終わったので、乗り越えてはないですね。ただ、よく頑張ったかなと思います」
【スカウト人生のスタート】
今年9月、楽天モバイルパーク宮城。近藤は「夏は暑くて地獄でしたね」と、日焼けした両腕を見せて笑った。
「現役の時はずっと長袖だったので、皮膚が弱っているのか、日焼け止めを塗っても塗ってもダメで......。すごく赤くなって、そこは戦いでしたね」
今年は楽天のスカウトとして、東北6県と北海道を担当した。
「移動には車、電車、飛行機、新幹線、タクシーとすべて使います。今年は勉強の1年として、頑張って動いたとは思うのですが、まだ行けてないところもあるのかなと。来年はもっと効率よく、いろいろ行きたいと考えています。
今は手探りですけど、やっぱりいい選手はほかの人が見てもいいと言いますね。そのなかで、来年以降は自分の色を出していけたらいいかなと。楽天では自分が戦力になれなかった分、しっかり球団の戦力になってくれる選手を裏から支えていきたいですね」
昨年11月29日、近藤は数人の選手たちが自主トレをする戸田球場を訪れた。
「投げられていいね」
若い選手のキャッチボールを眺めると、そう声をかけたのだった。
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