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故郷で醤油も作る元ヤクルト荒木貴裕が振り返る、新人時代の宮本慎也の言葉「若いうちは、みんなが休んでいる時に練習しろ」 (3ページ目)

  • 白鳥純一●取材・文text by Shiratori Junichi

 ヤクルトの名手、宮本慎也に続く選手として期待された荒木は、新人ながらも春季キャンプで一軍の切符を掴んだ。

「入団してまず驚いたのは、プロ野球の実力の高さでした。レギュラーをつかんでいる選手はもちろん、なかなか出場機会を得られていない先輩方も本当にレベルが高くて。『こんなにすごい選手でも、試合に出られない世界なのか......』と痛感しました」

 その後もオープン戦でアピールを続けた荒木は、球団のルーキーとしては40年ぶりとなる開幕戦の先発メンバーに起用された。

「本当に右も左もわからず、ただ毎日必死に過ごしていました。オープン戦でプロの環境に慣れたつもりでいましたが、公式戦で感じるプレッシャーや、自分のプレーに対する責任感はすさまじいものがあって、恐怖すら感じましたよ」

 ルーキーイヤーの2010年は18試合に出場。打率は.100(20打数2安打)と、プロの壁にはね返された1年になった。

「全体的に実力不足を感じずにはいられませんでした。打撃では狙い球を絞ったり、配球を考えながら打席に立つ重要性を痛感しましたし、守備面でも飛んでくる打球の速度が格段に速いので、対応に苦労させられました」

【苦境で支えになった宮本の言葉】

 しかし二軍でもへこたれず、公式戦やチームの練習が始まる前の特守を日課とし、自身のレベルアップと試合に出続ける身体作りに励んだ。殻を破るために奮闘する荒木を支えたのは、同じ内野手で「いつも気遣ってくれた」という宮本慎也の言葉だった。

「若いうちは、みんなが休んでいる時に練習しろ」

 その言葉を胸に刻んだ荒木は、選手として過ごした14年間、1日も休むことなく練習を続けた。荒木は「ずっと練習を続けられたのは誇りですし、宮本さんの言葉があったからです」と感謝の思いを口にする。

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