ヤクルト・高橋翔聖はWBC予選を戦った経験を生かす 台湾代表期待の若手は支配下登録を勝ちとれるか (3ページ目)
そして迎えたニカラグア戦。
「先発を告げられたのは、前日の試合終了後です。もう夜はワクワクドキドキでした」
しかもスタンドは満員の3万5000人。イースタンリーグしか経験のない高橋にとっては、まさに異次元の空間だった。
試合は消化試合ではあったが、高橋にとっては今後のキャリアを左右する大舞台。いつも以上に気合いが入った。
しかし、先頭打者をショートゴロに打ちとったかと思いきや味方がエラー。つづく打者に二塁打を浴び、一死も取れずに失点。その後もタイムリー安打を許し、試合開始からわずか数分で2失点を喫してしまった。
ベンチからコーチが出てきた時は、そのまま交代かとも思ったが、若武者の将来にかけたのだろう。そのまま続投となり、予定どおりの2イニングを投げた。結果として4安打を許しながらも、失点は初回の2点だけ。三振も1つ奪った。
試合後、高橋は「悔しかったですね。やっぱり代表戦ですから」と振り返り、「若さは言い訳にはならない」と語った。その姿勢に、台湾球界の重鎮も感心したという。その一方で、高橋はこうも語っている。
「やっぱり、国民全体が見ているなかでプレーするっていうのは違いました。それにこんないい球場で、子どもの頃から見ていたスター選手に囲まれて、すごく楽しめました」?
台湾はこの試合を完封負けで落としたが、プレーオフでスペインに勝利し、本戦出場を決めた。来年、日本と同じプールで戦う可能性は高い。高橋もその舞台に立つことを夢見ており、まずはヤクルトで育成から支配下登録に上がり、一軍のマウンドに立つことが目標だ。
台湾代表として戦った貴重な経験を生かし、今後、高橋がどのような成長を見せてくれるのか、楽しみでならない。
著者プロフィール
阿佐 智 (あさ・さとし)
これまで190カ国を訪ね歩き、22カ国で野球を取材した経験をもつ。各国リーグともパイプをもち、これまで、多数の媒体に執筆。国内野球についても、プロから独立リーグ、社会人野球まで広くカバー。数多くの雑誌、ウェブサイトに寄稿している。2011、2012アジアシリーズ、2018アジア大会、2019侍ジャパンシリーズ、2020カリビアンシリーズなど国際大会取材経験も豊富。
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