【侍ジャパン】若手投手陣がテクノロジーを駆使して特訓中 プレミア12連覇へカギは高めのストレート (3ページ目)
その意味でもうひとり、面白い存在が楽天の鈴木だ。今季は49試合で2勝0敗1セーブ24ホールド、防御率1.66、WHIP0.92という好成績を残し、28歳で侍ジャパンに初招集された。
このサウスポーに興味を示したのが、トラックマンのアナリストだ。宮崎合宿初日でブルペンを終えたあと、熱心に会話を交わす姿があった。鈴木が明かす。
「アナリストの方から『シーズン中もこういう数字なのか』とか、『どういう意識で投げているのか』と聞かれ、いろいろすり合わせをしていました。いろいろな考えをあらためて聞けるのは、自分にとっても新たな引き出しになるので、すごくいい時間でした」
アナリストが特に注目したのは、鈴木の宝刀であるスライダーだった。ほかの投手ではなかなか見たことのないような軌道で、トラックマンの数値的にもよかったという。
鈴木がスライダーの握りを示すと、親指を擦るように使う点がほかの投手とは異なっていた。おそらくそれが、ほかの投手とは違う軌道を生み出しているのだろう。何かが周りと違うからこそ、"宝刀"になるわけだ。
「僕は親指を使わないと、変化球は投げられないんで。逆に僕からしたら、それが普通だと思っていました。それが普通じゃないんだって、今回知りましたね(笑)」
捕手の坂倉も「見たことのないボール」とコメントしていたが、"平均"から外れることは武器になる。軌道を思い描いて打ちにいく打者にとって、そのイメージから外れるからだ。再び鈴木の弁だ。
「いかに(縦変化と横変化で)平均の数値から外れるか。みんな、試行錯誤してやっていますよ。データを見て、『外れた位置にある人は誰だろう?』と思ったら、やっぱり活躍している人でした。平均から外れたボールは武器になるので、そういうボールが1個でも多くあればいいなって思いながら僕も練習しています」
鈴木は新しい球種を投げたいと思ったとき、実際に投げてみてそのボールを解析し、「このボールだと、このぐらい変化したら抑えられる」と判断したうえで磨いていくという。データ好きの自身について「ほぼ趣味ですけどね」と笑うが、今回、侍ジャパン投手陣で最年長左腕は、そうして野球の腕を磨いてきたわけだ。
鈴木や藤平、清水、そして大勢をはじめ、日本代表に選ばれるだけの能力を持つ、多士済々のブルペン陣。プレミア12で力を最大限に発揮すべく、個々が本番に合わせて調整を続けている。
著者プロフィール
中島大輔 (なかじま・だいすけ)
2005年から英国で4年間、当時セルティックの中村俊輔を密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『山本由伸 常識を変える投球術』。『中南米野球はなぜ強いのか』で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。内海哲也『プライド 史上4人目、連続最多勝左腕のマウンド人生』では構成を担当。
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