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ヤクルト・大西広樹の進化にコーチ陣も脱帽「すごい成長」 防御率0.93、オールスター初選出... (4ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya

 そして「やっぱり感覚だけじゃ何が悪いのかはわからないので......」と言って続けた。

「数字で出してもらったほうが、吹っ切れてやれるというか。状態が悪い時はここの数値がこうで、こうだから体が突っ込んでいるとか......そういうので出力が変わってくるので、いいポイントで毎日できるように数字を出してもらっています」

 大西の野球に向き合う姿勢は、若い選手たちにもいい影響を与えている。二軍の松岡健一投手コーチは、ある日の戸田球場でこんな話をしてくれた。

「大西はいま流行っているトレーニング方法などを取り入れ、その経験を選手たちに伝えてくれているみたいです。この前も金久保(優斗)が一軍に昇格したときに教わって、また二軍に戻ってきたんですけど、練習に取り組む姿勢が変わっていたんですよ。やっぱりコーチが言うよりも、同じ選手の言葉のほうが響くことがあります。ありがたいですし、感謝しています」

 初めて選出されたオールスターについて聞くと、「まだ実感はないです」と笑った。

「当日はすごいピッチャーが何人もいるので、ちょっとでも会話できたらと思います。なかでも、中日の(ライデル)マルティネス投手には、あのフォークをどういう感覚で投げているのかを聞いてみたいです。ただ指を開けて投げるだけじゃ投げられないボールだと思うので」

 夢の球宴が終われば、すぐに後半戦がスタートする。

「自分は目標を持たないほうが伸びると思っているので、数字やポジションへの意識はなく、今はまだ一軍でフルシーズン戦ったことがないので、そこを目指しています。新しい挑戦は、今年も来年も再来年も続けたいと思っていて、挑戦することを増やしていけば、まだまだ上に行けるんじゃないかと。そういう感じです(笑)」

 大西のピッチングは、チームの巻き返しに不可欠だ。 

著者プロフィール

  • 島村誠也

    島村誠也 (しまむら・せいや)

    1967年生まれ。21歳の時に『週刊プレイボーイ』編集部のフリーライター見習いに。1991年に映画『フィールド・オブ・ドリームス』の舞台となった野球場を取材。原作者W・P・キンセラ氏(故人)の言葉「野球場のホームプレートに立ってファウルラインを永遠に延長していくと、世界のほとんどが入ってしまう。そんな神話的レベルの虚構の世界を見せてくれるのが野球なんだ」は宝物となった。以降、2000年代前半まで、メジャーのスプリングトレーニング、公式戦、オールスター、ワールドシリーズを現地取材。現在は『web Sportiva』でヤクルトを中心に取材を続けている。

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