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斎藤佑樹が映像に残した引退する盟友との惜別のキャッチボール 「僕にこのフォーシームがあったら......」 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta

 やっと見つけたと思ったら、軽ーいキャッチボールの動画で、これじゃ、全然、わかんないよって(笑)。でも大石は「オレは感覚でやっている人間だから、それでいいんだ」と言っていました。そういう考え方ができるのって、羨ましいですよね。シンプルに考えられれば頭の中がクリアになるんだろうなと思うんです。僕は多角的に状況を捉えて考えたいので、さまざまな要素が頭の中に並んで、何が原因なのか見えなくなることもよくありましたから。。

 大石が引退した時、周りから「大石くんがやめたね」ってよく言われました。そういう時、何て言えばいいんだろうって思っていました。「よく頑張ったよ」なんて言えないし、「僕も頑張ります」としか言えなかった。

 僕は自分のことで必死だったし、大石もそうだったと思うんです。ただ、大石は僕よりも先に次へのスタートを切った。それを僕は、何かの節目だと感じたんです。

 もともと僕は昔のことは気にしないタイプなんですが、時々、ポンと自分の気持ちが熱くなる瞬間が来るんです。もう、大石とはプロ野球選手として一緒に野球をすることはないんだと思ったらキャッチボールをしたくなった。だから大石にLINEで訊いたんです。キャッチボールしようよって。そしたら、「ああ、いいよ」って返ってきたんで、最後のキャッチボールをすることになりました。

 それにしてもキャッチボールの時に大石が投げていたボール、引退するならもう使わないんだから、そのままそっくりオレにちょうだい、と思いましたよ。アニメにあるじゃないですか、そのパーツだけもらう、みたいな(笑)。大石の真っすぐ、低いところから筒の中をシューッと通って、ポンッと出てくる感じなんです。シューッ、ポン、シューッ、ポンって......そのきれいな真っすぐ、オレにドッキングしてくれと、本当にそう思いました。

 あの時の大石はキャッチボールですからスピードはそれほど出ていなかったと思いますが、トラックマンでいうところのエクステンション(ピッチャーがボールをリリースするときのプレートからホームベース方向へのリリース位置までの距離)の数字がかなり大きいと感じたんです。

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