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斎藤佑樹が映像に残した引退する盟友との惜別のキャッチボール 「僕にこのフォーシームがあったら......」 (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta

 つまりリリースポイントがバッターに近くて、とくにフォーシームが特徴的でした。いかにもバッターが芯で捉えにくそうな球筋で、「僕にこのフォーシームがあったら......」と野球の神様にお願いしたくなったほどです。

【今も忘れない失望感と焦り】

 そして迎えたプロ10年目、まさかの新型コロナウイルスの感染拡大によって開幕が延期になります。あの期間、ファイターズは鎌ケ谷組と札幌組とに分かれて自主練習になりました。

 僕は鎌ヶ谷組でしたが、ユニフォームを着ることもなく、ジャージのまま、可能な限りの練習を続けていました。コーチもキャッチャーもいない、トレーナーさんは交代でいてくれましたが、基本は個人練習です。ブルペンで投げたい時は事前に伝えて、キャッチャーの誰かとスケジュールを調整するという感じでした。

 そんなある日、僕はブルペンで投げたくてキャッチャーの方に確認してもらったら、石川亮(現在はバファローズ)が受けてくれることになりました。で、僕はジャージのまま、ブルペンに入って、スッと何気なく投げたんです。

 そうしたら、「うわっ、この感覚、いつかのタイミングに似てるな」と......そう、その時の感覚がメチャクチャよかったんです。それこそ高校や大学の時の、肩甲骨がすごく下に落ちていて、肩が上がっていない感じ。力みなく、下にストンと落ちながらそのままストーンと投げられました。「そうだ、これだ」と思いました。

 この感覚はずっと戻らなくて、もうできないんだろうなとあきらめていたのに、「いやいや、こういう動き、今のオレにもできるじゃん」とビックリしたんです。ケガに苦しんでいろいろと模索してきた答えが、このコロナ禍の状況で来るのかと思いました。

 それはネガティブな意味ではなく、この時間を使って思ってしっかり固めようと思えたんです。その2日後、ブルペンに入ったらまたいい感じで、「よし、これは継続できているぞ」とうれしくなりました。

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