西武・中村剛也の走塁術は「打球判断と状況判断のうまさが想像を超えていた」 ヘッドコーチ・平石洋介が語る「走魂」の成果 (3ページ目)
このようなジェスチャーを塁上で時折見せていた中村こそ、平石は『走魂』の重要な体現者なのだと、若手以上に評価している。
「サンペイ(中村)はもとからうまいんです、走塁が。若い時からスピードがある選手だとわかっていましたけど、一緒のチームになって感じたのは打球判断と状況判断のうまさ。今までのイメージよりさらに上をいきました」
ランナー二塁で中村が単打を放つ。浅い打球であっても外野の動きを先に感知し、バックホームするという確信を持てばすかさずセカンドを陥れる。そういったプレーを中村は淡々とこなした。
中村の好判断で、平石が驚嘆した走塁がある。8月8日の日本ハム戦でのことだ。
西武が4−1とリードしていた4回2アウト。中村は三塁にいた。相手ピッチャー・加藤貴之のワンバウンドのボールをキャッチャーの伏見寅威が前に弾くや、中村がスタートを切る。間一髪のセーフ。相手ベンチはリクエストを要求したが判定は覆らず、5点目を奪った。
「2アウトならランナー三塁や二、三塁、満塁でもそうですけど、足を警戒しなくていい長打のある右バッターならサードは前に守らなくていいんで、ベースよりうしろで守れるわけですよね。そうすると、三塁ランナーは相手サードと同じくらいの距離、つまりいつもより大きくリードできるんです。ということは、キャッチャーのファンブルを意識しておけばホームを狙えるチャンスは十分にあるということ。サンペイはこういう当たり前のことを、当たり前のようにできるんです」
このようなプレーをベテランがこなすことこそが、西武にとって重みのあることなのだ。
中村だけではなく、普段はバット1本、1打席に賭ける同い年の栗山巧も、推進力を弱めることなくグラウンドを駆けたことも忘れてはいけないと、平石は強調する。
「ベテランだから褒めるわけではなくて。監督の意向をちゃんと汲み取ってくれて、先頭に立ってそういう姿勢を出してくれたのがすばらしいですよね。あのクラスの選手が『オレはええわ』じゃ、チームは成り立たないです」
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