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斎藤佑樹が「このまま野球ができなくなったらどうしよう」と不安だった日々 785日ぶりの勝利に「第二の野球人生が始まる」 (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta

 室蘭でつかんだ真っすぐの手応えをたしかめようと思っていたら、思いきって踏み込むことができなくて......それは、イーグルスの先発が(トラビス・)ブラックリー投手だったからです。彼は大きな体躯を生かして上体のパワーで投げるタイプのピッチャーで、左投げなのにプレートの三塁側を踏んで投げていました。

 その彼の右足が踏み込む位置が、ちょうど僕の左足が踏み込む位置と重なってしまっていたんです。ブラックリー投手の歩幅が狭いうえに、利府のマウンドの土が柔らかかったことも重なって、僕が踏み込むところが掘れてしまって、巨大な深い穴ができていました。それが気になって、腕を振るのが怖かったんです。

 最初は思いきって踏み込まずにそっと投げていたんですが、こんなふうにしか投げられないならと踏み込む位置を変えたら、バッターが意外な反応をしました。プレートの真ん中を踏んで投げたら、とくに左バッターが打ちにくそうにしているんです。インコースのストレートがいい角度で決まる感じがあったので、これはもしかしたら効果があるのかな、と思いました。

 その後の二軍の試合で右バッターと左バッターでプレートを踏み分けて投げてみたらいい感じだったので、一軍でも継続したというわけです。

【785日ぶりの白星】

 (7月12日の)ホークスとの試合は5回で交代となりました(78球、被安打4、与四球2,奪三振2、内川聖一に打たれたソロホームランによる1失点)。勝ちはつきませんでしたが、納得できるピッチングはできたと思います。

 いい緊張をつくれたというか、怖くてどうしようという緊張ではなく、自分で集中して、あえてつくりにいって、自分でコントロールしたつもりの緊張だったので、不安はまったくありませんでした。そんな気持ちで一軍のマウンドに立てたのは久しぶりです。こういうピッチングを続けていれば、いつか勝ちもついてくると思った記憶があります。

 プロに入った時から終始一貫、ストレートにこだわってきたはずなのに、勝つことから遠ざかっているうちに、いつしかその思いを忘れてしまっていました。ケガをしてからは身体を強くして、フォームを組み立て直して、速さではなく強さを求めてストレートを磨いてきたつもりでした。そのボールをストライクゾーンへ投げ込む勇気を持てないなんて、あり得ないことです。

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