史上最高のサブマリン・山田久志の剛腕伝説 松永浩美が「悪魔みたいだった」と振り返った場面とは? (3ページ目)

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo

――山田さんといえばシンカーが有名ですが、球速差をつけたカーブ、スライダー、フォークなども投げていました。サードの守備位置から見ていて、どの球が一番すごかったですか?

松永 山田さんは、基本的に真っ直ぐとシンカー。個人的に、いろいろな球を投げるピッチャーは「すごい」とは思っていません。プロの世界で、例えば江川卓さん(元巨人)みたいに真っ直ぐとカーブ、村田兆治さん(元ロッテ)みたいに真っ直ぐとフォークだけとか、2種類で通用しているピッチャーがすごいと思っています。今でいえば、佐々木朗希(ロッテ)もそうですね。今後も真っ直ぐとフォークだけで勝負していってほしいです。

――山田さんはアンダースローでも球が速かったですね。

松永 145 kmぐらい出ていましたね。一般的なアンダースローのピッチャーと比べてスピード感がかなり違いました。ワインドアップで構えて、そこから足がグーッと上がって。「上から投げるんかな」と思ったら、そこからスーッと腕が下がっていく。フォームもかっこよかったですね。

【時折見せるお茶目な部分も】

――ここまでの山田さんのお話を聞くと、隙がなさそうですね。

松永 そう思うじゃないですか。でも、意外とお茶目で長嶋茂雄さんみたいなところもあるんです。ある日、山田さんがロッカーをウロウロして何かを一生懸命に探していた時があって。「どうしたんですか?」と聞いたら、「ユニフォームがないんだよ」と。でも、山田さんはすでにユニフォームを着ていたので、「着てるじゃないですか」と指摘したら、「もう1着がないんだ」とのことだったんですが......。

 私はすぐに、山田さんがユニフォームを2枚重ねて着ていることに気づきました。ただ、あえて言わなかったんです。その日は寒かったと記憶しているのですが、気温が低い日はユニフォームの下に防寒のカッパみたいなものがあって、その上にユニフォームを着るんですけど、山田さんは間違えてユニフォームを2枚着ていたんです。

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