斎藤佑樹が「苦手な状況設定」で相次ぐ乱調 期待に応えられず「緊張の糸が切れてしまったのか」 (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta

【緊張の糸が切れてしまった】

 ファームに行って最初の先発は、暑い夏の鎌ヶ谷でのフューチャーズ戦(8月4日、イースタン・チャレンジマッチ)。5球団で戦うイースタン・リーグの公式戦では当時、出場機会を得られない各球団の若手が集まる混成チームを加えて試合をしていたんですが、それがフューチャーズでした。

 僕はこの試合、プレートの真ん中を踏んでストレートとスライダーをシンプルに、リズムよく投げることをテーマにしていました。それがうまくできて、毎回、3人ずつで抑えます。ストレートは低めに集まっていたし、アウトローのスライダーもうまく振らせることができていました。そのスライダーはカウント球にも使えましたし、相手バッターの懐も積極的に攻めることができました。予定していた5回を、たしかノーヒット、無失点(58球)で投げ終えたんです。

 ところがベンチからの指示で、僕は6回のマウンドへ上がることになりました。ランナーをひとりも出さなかったことで、セットポジションからのピッチングができていないと言われたからです。6回、僕は先頭バッターに対して、セットポジションで投げました。ランナーもいないのにセットで投げるなんて、僕にとっては気持ちよくはないピッチングです。

 こういう状況設定をして投げるのは、緊張感のある一軍の実戦では経験していなくて、その時の僕は苦手でした。それでも抑えればいいだけの話なんですが、情けないことにリズムを崩して連打を浴びてしまいます。6回にヒット5本を打たれて、5失点。5回までは満点だったのに、6回の続投で0点になってしまいました。

 ファームでの2度目の先発は、これまた酷暑の戸田(8月11日、スワローズ戦)です。この試合でそれなりの結果を出せば一軍に上がって、中6日で札幌ドームのマウンドに立つはずでした。

 でも、この日は6回を投げて3失点。どうにも微妙な結果で僕は一軍に呼び戻されることはありませんでした。そのあたりで張り詰めていた緊張の糸が切れてしまったのか、僕は結果を残すことができなくなってしまいます。

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