斎藤佑樹が「苦手な状況設定」で相次ぐ乱調 期待に応えられず「緊張の糸が切れてしまったのか」 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta

 その直後、ファイターズが3点をとって逆転。2点のリードをもらった3回、またも大引さんにヒットを打たれて、初回と同じツーアウト一塁で4番の李大浩選手を迎えます。

 初球、外を狙ったストレートが外れてボールになりました。あとから考えたら、もしかしたらこの時すでに余計な力が入ってしまっていたのかもしれません。せっかくオールスターでうまく力を抜く感じをつかんだのに、打たれたくないと思うと知らず知らずのうちに力が入ってしまう......初球はそんな感じの外れ方でした。

 力を抜いてストライクを投げる、という両立が僕にとっては難しかったんです。開幕直後にはそれができていたのに、暑くなるにつれて疲れも溜まってきて、抑えられていたはずのボールで打たれるようになると、いつしか力が入ってきます。力が入るとボールのキレも失われて、コントロールは乱れました。

 そんな状況でどうしても打たれたくないとなると、さらにきわどいところを狙いすぎて、ボール球が先行してしまいます。そんな悪循環を断ち切るためには、淡々と、力を抜いて、ストライクゾーンに投げることだけに集中しなければなりません。

 でも、力は入ってきちゃいます。

 2点をリードしていたこともあって、勝ちたいという気持ちも出てきますし、ここを抑えればいい流れになるという場面でもありましたから、自信のある球で勝負したかったんです。

 あの頃、僕はスライダーを思うように操れない感じがあって、カウントをとる時に自信を持って投げられませんでした。これだけ力を抜いているのにカウントをとるスライダーのフワッという感じが思い出せなくて、1−1からアウトコースのストレートでカウントをとりにいきます。そのストレートが高く浮いて、李大浩選手の長い腕が伸びきったところに合ってしまいました。これが右中間へのホームランとなって、3−3の同点に追いつかれます。

 そして4回、3連打を許して(53球で)交代......試合後、僕は栗山(英樹)監督に呼ばれて二軍行きを告げられました。その時、監督は「2回、投げてきてくれ」と言ったんです。僕はファームでの2試合、ちゃんと周りを納得させるだけの結果を出してこい、という意味だと受けとりました。もちろん嫌な流れも続いていましたし、気持ちを切り替えなくちゃという気持ちもありました。

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