今中慎二が明かす「10.8決戦」で落合博満から仕掛けられた心理戦 「俺はカーブを狙う」の挑発に「一球も投げられなかった」 (2ページ目)

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo
  • photo by Sankei Visual

【マウンドで感じたキャッチャー中村の緊張】

――試合の話に戻しますが、当時の巨人打線で落合さん以外にマークしていたバッターはいましたか? 入団2年目の松井秀喜さんが3番にいて、5番には原辰徳さん(元・巨人監督)がいました。

今中 松井に関しては"オーラ"が出る前でしたからね。落合さんが4番に君臨していれば、まだ出ませんよ。原さんはオーラはすごかったですけど、集中する時としない時の差があるんです。

 この試合ではないのですが、「なんだ、このすごい集中力は? これはまずい、打たれる」と感じる時があって。キャッチャーの中村さんがマウンドに来て、「原さんめちゃめちゃ集中してるよ、どうする?」って。「ですよね、こっちまで伝わってきます」などと話した後に、勝負にいったら本当にやられちゃったんです。「引くところは引かなあかんな」と思いましたね。でも、原さんとの対戦はいつも楽しみにしていました。

――強力なクリーンナップを中心に、助っ人のヘンリー・コトー(この試合でもソロ本塁打を記録)やダン・グラッデンらも並んだ強力な打線。巨人打線に対しての攻め方は事前に中村さんと話していましたか?

今中慎二(以下:今中) 普段の試合でもそうですが、試合前に打ち合せはしなかったです。試合中に「この球がきてる、この球がきてない」とか、マウンドに来て言ってくることはありましたが、この試合ではそれすらなかった。中村さん、めちゃくちゃ緊張していましたから。

――なぜ、緊張していることがわかったのですか?

今中 サインを出すのが遅かったんです。明らかに緊張していて、こっちにも緊張感が伝染してきそうな感じでした。ランナーが出た時にアウトカウントを間違えていましたし、それを見た時に「あぁ、やっぱり緊張しているんだな」と(笑)。普段はそんなことないですし、中村さんが緊張していたのを初めて見ましたよ。

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