西武「管理野球」広岡達朗から森祗晶らが受け継いだ後「緩んだタイミング」石毛宏典が考察 (3ページ目)

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo
  • photo by Sankei Visual

【選手の"自主性"尊重の傾向】

――伊東さんの後を継いだのは渡辺久信監督(現GM)。石毛さんは以前、「自分と似ていて、いい意味で細かいことにこだわらないタイプ」と言われていましたが、指揮官としての渡辺さんをどう見ていましたか?

石毛 ナベちゃん(渡辺久信)も伊東同様に管理野球を体験してきたわけですが、彼はさっぱりした性格。厳格な規律を決して軽視していたわけではないと思いますけど、それよりも選手の"自主性"を尊重していたと思います。兄貴的な雰囲気もありますし、選手たちも接しやすい監督だったんじゃないですか。 

 ただ、管理野球を是とする観点で考えると、この時が「管理野球が緩んだタイミング」だったと思います。そう思う理由のひとつとして、ナベちゃんが6年間監督を務めた後、2014年に再び伊原さんが監督に就任していますよね。緩んできた空気を、そこで1度引き締めにかかったんじゃないかと思うんですよ。 

――しかし、渡辺さんは監督就任1年目にリーグ優勝、日本一を達成。2年目は4位に甘んじたものの、3年目以降は常にAクラス(2位3回、3位1回)を維持するなど結果を出していました。

石毛 一般的に見ればある程度の結果を残したと言えるかもしれませんが、5年間もリーグ優勝から遠ざかっていたわけですよね。球団が伊原さんを呼んで規律重視の管理野球への回帰を図ろうと考えたのは、久しく優勝していなかったことが要因のひとつだと思うんです。

――ただ、伊原監督を迎えてスタートした2014年、立て直しどころか両リーグ最速で30敗を喫するなど序盤から最下位に低迷。6月初旬に伊原監督が休養となり、打撃コーチだった田辺徳雄さんが監督代行で指揮を執ることになりました。

石毛 傍から見た印象ですが、規律や厳しさを重視した伊原さんの野球が選手たちに受け入れられず、「もう、そういう時代じゃありませんよ」と反発された部分もあったんじゃないかと。ナベちゃんが監督時代に浸透させていた自主性を重んじた方針、その頃の選手たちが育ってきた時代背景の違いなどもあったのかもしれません。その結果、その年は5位に終わりましたし、さらに優勝できない時期(2009以降、リーグ優勝したのは辻発彦監督時代の2018年、2019年)が長く続きましたよね......。

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