斎藤佑樹はベテランの思いに涙腺崩壊 鶴岡慎也が手渡してくれた1枚のDVDと金子誠のダイビングキャッチ (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Sankei Visual

 でもあの頃はいつでも近くにマシンがあるわけではありませんでした。しょっちゅう鳥取まで行くこともできず、それでも難しいなりに、そういうフォームへの意識は引退するまでずっと持ち続けていたと思います。

【鶴岡慎也のリードに救われた】

 開幕して2試合目、千葉でマリーンズを相手に投げた時は、メディアの方から「強い風がボールを動かしてくれた」と言われましたが、正直、そういう意識はありませんでした。たしかに風のおかげかと訊かれて僕もそんなコメントをしましたが、ボールを動かすのは得意なほうでしたし、打ち損じたバッターが『あれっ』という顔をするのを見るのはやっぱりうれしかったです。打てそうで打てない、どこがいいのかわからない、というバッターのコメントを聞かされると、思いどおりだなと思っていました。

 リズムよく、球数少なく、ボールを動かしてゴロを打たせる......風の強い千葉では打ち上げさせてしまったら何が起こるかわかりません。開幕戦の勝利もうれしかったけど、ローテーションの1番目を任せてもらって、その2試合目に勝てたことはもっとうれしかった(7回、被安打6、奪三振3、与四球1、失点2、84球)。

 意識していたのは、立ち上がりはしっかりフォーシームを見せておく、ということです。この時も1回から3回、打順が一回りするまでは初球、ほとんどフォーシームを投げていたと思います。それは、ツルさん(キャッチャーの鶴岡慎也)のおかげでした。

 僕は変化球が得意なはずなのに、ツルさんはフォーシームのサインを出してくるんです。ある時、その理由をツルさんに訊いたら、「フォーシームを投げなかったら基準がつくれない、それでは変化球を生かせるはずがない」と教えてくれました。

 ツルさんは「同じ試合のなかでひとりのバッターとは3巡目、4巡目まで対戦しなくちゃならないんだから、1巡目にしっかりフォーシームを見せておかないと、後半、苦しくなる」と......最初から変化球を投げすぎると、後半、スライダーやツーシームを見送られてしまうと言うんです。

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