斎藤佑樹はベテランの思いに涙腺崩壊 鶴岡慎也が手渡してくれた1枚のDVDと金子誠のダイビングキャッチ (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Sankei Visual

 極端な話、打たれてもいいから前半はフォーシームでいけるところまでいこうと、ツルさんは僕を引っ張ってくれました。そうやって攻めたことが次の試合、その次の試合で生きてくるから、というのがツルさんの考えです。「それでダメならしょうがない」「プロではダメだと思う」とまで言ってくれました。

 1巡目は変化球を少なく、フォーシームで乗りきらないと、3巡目、4巡目も無理だし、次の試合、その次の試合も打ちとれない。「そこは割りきらないとダメだよ」とハッキリ言われて、なるほどと納得しました。

 納得はしましたが、でもツルさん、1巡目だけじゃなくて試合の後半にもけっこうフォーシームのサインを出してきて、『えーっ、ここでフォーシームはちょっとしんどいな』と僕のほうが思っちゃう(苦笑)。

 ピンチになるとスライダーとかチェンジアップ、フォークを使って、ボールゾーンに投げたくなってしまうんです。でもツルさんは、真っすぐで来い、みたいな仕草をする。ミットを揺らしまくって、絶対にここだからな、みたいな強気の......いや、あれはツルさんにとっては強気でもなんでもなくて、シンプルな配球だったのかもしれませんね。僕はツルさんにいいところをすごく引き出してもらったと思っています。感謝しかありません。

【金子誠の決死のダイビングキャッチ】

 ツルさんは、僕が三振をどうやってとったらいいのかわからなくなって悩んでいた時期、何も言わないのにそれを感じとってくれて、スッと1枚のDVDを渡してくれたこともありました。「これを見て、勉強しておきな」って......それは小野晋吾(マリーンズ)さんのピッチングの映像でした。

 小野さんはスライダー、カットボール、シュートをうまく投げ分けていて、ツルさんは「佑ちゃんって、こういう感じがいいと思うんだよね」と言っていました。ここまで考えてくれていたのかと驚いて、すごくうれしかったこともよく覚えています。

 3試合目は札幌でマー君(イーグルスの田中将大)と投げ合って(7回途中まで投げて2失点)、僕に負けがつきました。そして4試合目は、今でも忘れられない大切な試合になりました。

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