14年の現役生活に幕 ヤクルト荒木貴裕が最高のユーティリティーになれた理由 (2ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Sankei Visual

◎犠打の心得

「僕もバントは苦手でした。当たり前にできると思われているからこそ難しい。こういう形なら、こう転がるとか......成功する形を見つけることですね。そのためには練習して、しっかり自分の形を作るしかない。あとは相手の守備力じゃないですけど、フィールディングがそこまで得意じゃない投手だったら、多少強く転がってもいいわけですし。そういった状況判断も大事だと思います」

◎守備固めの心得

「送りバントと一緒で、できて当たり前と思われているからこそ難しいです。極端な考えですが、レギュラーであれば取り返せるチャンスはいくらでもありますが、守備固めや代打でのバントの場合は一回ミスをしてしまうと取り返せる場面がないというか......。その悪い場面の印象だけが、自分のチームや相手チームに残ってしまうんです。そうならないようにするためには練習するしかない。それでも人間がやることなのでミスは起きてしまう。そうなったらより練習する。それしかないと思います」

◎試合に臨む心得

「大切にしていたのは準備です。その日、守る可能性のポジションを自分の想定する範囲で練習する必要がある。試合では、代打、代走、守備固めなど、戦況を見ながらどこでもいける準備をしていました。ただ毎試合戦況は違うので、めちゃくちゃ抽象的な言うと、試合には流れって絶対にあるので、その流れを敏感に感じられるようにすることです」

【ヤクルトは極端なチーム】

 荒木は「引退を考え始めたのは、9月の頭くらいです」と話した。

「正直、体の部分では悪いところもあって......治るものじゃなかったですし、そこと付き合いながらだったので、それはしんどかったです。そのなかで、なかなか一軍にあがる機会がなく、チームも若い選手を積極的に起用しているところがありましたし。スワローズに入ってから、チームの戦力になれない時はやめようと思っていたところもありましたので」

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