阪神は38年ぶり日本一へ第一関門のCSを突破できるか 名コーチが不安視する「空白の2週間」 (2ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • photo by Koike Yoshihiro

 投手はキャンプのように、ブルペンやライブピッチングで感覚を鈍らせないようにする方法がある。しかし打者は、フリーバッティングだけやっていればいいというものではない。真剣勝負の場に立たないと、"打撃勘"が鈍ってしまうのだ。

 打撃勘──言葉にすれば簡単だが、これを研ぎ澄まし、維持させることは想像以上に難しい。具体的にいえば、ストレート、もしくは変化球を待っていて、その球を完璧にとらえること。それができて、ようやく次の段階に入る。

 次に、予期していないコース・球種への対応となるわけだが、実戦から遠ざかると、この感覚が鈍ってしまうのだ。勘が鈍れば始動が遅れ、タイミングも狂う。そしてなにより厄介なのは、いくらフリーバッティングで多くの球を打ったとしても、生きた球を打たなければ打撃勘は戻ってこないことだ。

【打者の好不調の目安は2週間】

 さらに言えば、いま調子よくヒットを重ねている打者でも、2週間も経てばベストの感覚は狂ってくる。打者も生身の人間だから、好調と思っていても疲れが溜まり、フォームが崩れ、感覚も狂わされていく。言い換えれば、この好不調の波をどれだけ小さくできるかが、一流選手とそうでない選手の大きな違いとなる。

 そこで肝心なことは、打てなくなった原因をいち早く知ることだ。体の開きなのか、突っ込みなのか、そうしたフォームの欠点を探って、改善していかなければならない。

 いずれにしても、概して打者の好不調の目安は2週間。つまり、一度不振に陥った選手が調子を取り戻すのに2週間かかり、逆に好調だった選手も2週間経てば徐々にバットが湿り始めるというわけだ。

 毎日試合をこなすシーズン中ですら、それほどデリケートな感覚なのに、真剣勝負のない2週間を過ごすとなると、CSの1、2戦は相当苦労するかもしれない。

 近年は、宮崎で開催されるフェニックスリーグに選手を派遣して、実戦感覚を鈍らせないようにするのが定番となっている。岡田監督も投打を問わず送り込むらしい。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る