日本インカレ400m女王・鳥原早貴の今 ソフトバンク本社から志願してホークス広報に「野球と陸上のコラボが密かな野望です」 (4ページ目)

  • 和田悟志●取材・文 text by Wada Satoshi
  • 繁昌良司●撮影 photo by Hanjo Ryoji

【野球と陸上のコラボも思案中】

 そんなマイナス要素も、鳥原さんは「ある意味、自分の強みだと思っている」とポジティブに捉えている。

「自分はライトなファンの方々に近い。彼らが何を求めて球場に足を運ぶのか、彼らの気持ちを考えてPRすることも大事だと思っています。面白いネタがないか、常にアンテナを張り巡らせています」

この記事に関連する写真を見る たとえば、昨年3月にホークスの本拠地である福岡PayPayドームのファウルポールが「マルタイ棒ラーメンポール」と命名された。ファウルポールのネーミングライツ契約は日本で初めてのことだった。

「これは面白すぎる!」と思った鳥原さんの行動は、たんにプレスリリースを各メディアに発信するだけにとどまらなかった。自らマルタイに出向いて、いきさつや裏側を取材し球団の公式noteの記事にしたのだ。

 これにより、さらに掘り下げるメディアが出てきたり、SNSでちょっとした盛り上がりが起こったりした。プレスリリースだけではここまでの盛り上がりはなかったかもしれない。

「試合の勝ち負けはコントロールできませんが、球場に観戦に来たお客さまに『楽しかった』っていうふうに感じてもらえることはできるんじゃないかなと思っています。そう感じさせるのが事業広報の仕事だと思うので、しっかりとそれらを発信します。

 また、チームや選手だけでなく、球団で働く人にフォーカスした発信も行なっています。ホークスという会社のファンをひとりでも増やしたい」

 鳥原さんは、こんな思いを抱き、日々の業務に当たっている。

 陸上競技の経験者ならではのアイデアも思案中だ。

「陸上と何らかのコラボができたら楽しそうだなと思いますね。周東選手をはじめ、最近は俊足の選手が話題に上がるので、オフの期間にそういうコラボができたら、陸上ファンが野球を知るきっかけにもなるでしょうし、野球のファンが陸上のことを知っていただくきっかけにもなると思います。密かな野望です」

 走ることから離れても、陸上への愛は変わらずに持ち合わせていた。鳥原さんの野望はどのような形で結実するのか。願わくば、走る広報の姿を見てみたい。


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プロフィール

  • 和田悟志

    和田悟志 (わだ・さとし)

    1980年生まれ、福島県出身。大学在学中から箱根駅伝のテレビ中継に選手情報というポジションで携わる。その後、出版社勤務を経てフリーランスに。陸上競技やDoスポーツとしてのランニングを中心に取材・執筆をしている。

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