原樹理・高梨裕稔ら今季いまだ勝利ゼロのヤクルト投手たち 灼熱の戸田で奮闘、残り1カ月でシーズン初勝利を手にすることはできるか (3ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Sankei Visual

 高卒3年目の嘉手苅浩太は、8月6日の練習中に急遽、当日(ロッテ戦)の先発を言い渡された。それまでは中継ぎに12試合に登板して、防御率は10.95だった。

「あの日は本当に急に先発が決まって(笑)。決まった球数でいけるところまでと言われていたのですが、球数が少なかったので5回までいけました」

 二軍ではあるがプロ初勝利。同16日には武蔵大とのプロ・アマ交流戦に先発。6回をわずか55球、2安打無失点の快投。その後も2試合に先発し、イースタン公式戦では14イニング無失点を継続中だ。

 嘉手苅のピッチングを見て思わず唸るのは、1イニングを3〜6球と少ない球数で終えることがしばしばあることだ。嘉手苅は自身のピッチングをこう振り返る。

「僕の真っすぐは(回転が)きれいではないのですが、ピュッといったり、沈んだりするので、相手バッターも『あれ?』みたい反応をしますし、タイミングが合わなかったりするからじゃないですかね」

 真っすぐと同じくらいの球速のツーシームは、「自分のラインがあって、コントロールがしやすくて、ゴロを打たせることができるので使いやすいです」と言う。

 松岡健一二軍投手コーチは、嘉手苅について次のように語る。

「今の最速は145キロくらいですが、150キロの出力は持っています。それを出せるか、出せないかで苦しんでいますが、成長段階の経験としてはいいことです。プロ入り後にスピードが落ちましたが、これまでは"ただ投げて速かった"というだけで、なぜ速かったかということを理解していけたら、今後はスピードが落ちなくなる。身長191センチのあの体を見てもわかるように、ポテンシャルは高いですから。今こうして自信をつけてくれて、いい方向に進んでいるタイミングで上に上がれたら面白いですね」

 嘉手苅に初めての一軍への期待について聞くと、「まだまだです」と答えた。

「投げ方もいろいろ迷ったり考えたりしていくなかで、やっと145キロ以上が出るようになってきたので、まずは150キロに戻したい。最近は球速が安定するようにはなってきましたが、まだ試行錯誤の段階です。平均球速もまだまだですし、もっとスピードを上げていって、いつ一軍に呼ばれてもいいような状態で投げられるように練習していきたいです」

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