原樹理・高梨裕稔ら今季いまだ勝利ゼロのヤクルト投手たち 灼熱の戸田で奮闘、残り1カ月でシーズン初勝利を手にすることはできるか (5ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Sankei Visual

 取り組んだ成果は、7月の終わり頃から顕著となった。4試合に先発して防御率1.16。ボールの力強さは明らかで、なにより猛暑のなかでも弱音を吐かず、任された役割を果たす責任感の強さに二軍首脳陣からの信頼は厚かった。

「毎日、一軍に上がるため、一軍で活躍するために一生懸命やってきました。戸田には3カ月ちょっといましたけど、そういう思いを持ちながら練習も試合もやっていました」(高梨)

 シーズンも残り1カ月、プロ2年目から8年続いている先発での勝ち星について聞くと「そんなことを言っていられない立場ですし」と、前置きしたうえでこう答えた。

「ここから最後まで一軍にいることが大事ですし、前半は本当にチームに迷惑をかけました。今は二軍でやってきたことをしっかり継続して、チームに少しでも貢献したいですし、そのなかで勝ちがついてくれたらいいのかなというくらいの気持ちです」

 髙津臣吾監督は残り試合での二軍からの起用について、こう話している。

「何人かは一軍に来て、先発する人はいます。リリーフは流動的になるので、いつから誰々と決めてはないですけど、それもそのうちあると思います」

 灼熱の夏を乗り越えてたくましくなったピッチャーたちが、一軍のマウンドで躍動することを願ってやまない。

プロフィール

  • 島村誠也

    島村誠也 (しまむら・せいや)

    1967年生まれ。21歳の時に『週刊プレイボーイ』編集部のフリーライター見習いに。1991年に映画『フィールド・オブ・ドリームス』の舞台となった野球場を取材。原作者W・P・キンセラ氏(故人)の言葉「野球場のホームプレートに立ってファウルラインを永遠に延長していくと、世界のほとんどが入ってしまう。そんな神話的レベルの虚構の世界を見せてくれるのが野球なんだ」は宝物となった。以降、2000年代前半まで、メジャーのスプリングトレーニング、公式戦、オールスター、ワールドシリーズを現地取材。現在は『web Sportiva』でヤクルトを中心に取材を続けている。

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